FinTechエコシステムを支える5つの柱
では、このグローバルの先進FinTech市場と、日本の相違点は何が要因なのであろうか。これを理解するには、FinTechエコシステムと呼ぶ、FinTech市場を形成する利害関係者による共生、相互受益関係を理解する必要がある。
先進FinTech市場である米国や英国では、起業家、投資家をはじめとする以下に挙げる5つのプレーヤーが、それぞれの役割を担うことで相乗効果を生んでいる。結果として、金融イノベーションとFinTech投資が両輪として推進されてきた。それが意図的なものか、市場での自然発生的なものかは別として、これらのプレーヤーがそれぞれの役割を発揮している。
- 起業家・・・FinTechスタートアップの起業等を通じた起爆剤
- 投資家・・・投資・資金提供による市場形成・起業のサポート
- 金融機関・・・FinTechに対する実需の提供(内部への取り込み(Exit手段)や、実ニーズの提供を通じたスタートアップの育成)
- 監督機関・行政・・・規制緩和、税制優遇等による産業育成のサポート
- アクセラレータ・・・スタートアップ育成の場の提供
その一方で、日本においては、FinTech関連事業の担い手である起業家、そして資金の出し手である投資家などはそろいつつあるものの、その他の要素である金融機関、監督機関・行政、およびアクセラレータの存在が、相対的にみて依然として黎明期と言わざるを得ない。
しかしながら現在、これらのプレーヤーがその重要性に気づき、アクションを明確にとり始めている。特に、金融機関からの実需が徐々に顕在化するにつれ、現在、市場では新技術やスタートアップに対する真剣な議論が起きている。今後、実需として日本のFinTech市場を底上げしながら、その果実を分かち合う関係が形成されていくことが重要である。