IDC Japanは1月6日、国内のデータセンター(DC)の保守運用コストに関する調査結果を発表した。データセンターの規模や設備仕様の違いと保守運用コストの関係を調査したところ、データセンターの規模が大きくなりすぎるとスケールメリットによるラックあたりコストの削減効果が少なくなるという結果が出た。
調査では、ある一定の規模まではデータセンターが大きくなるほど、サーバラックあたりの保守運用コストは減少した。これは、データセンターの規模が大きいほど大量のIT機器、空調設備、非常用電源設備などの運用を集中して管理できるようになる、スケールメリット効果によるものだ。現在国内では大規模なデータセンターが次々と新設され、小規模なセンターが統廃合されているのは、こうした理由による。
しかし、ある一定の規模よりもデータセンターが大きくなると、スケールメリットによるコスト削減効果は次第に小さくなることも分かった。
具体的には、サーバラックの収容可能台数ベースで1000台を超えるような規模に達すると、規模をさらに大きくしてもサーバラックあたり保守運用コストの削減効果は限定的になる。こうした大規模なデータセンターでは、運用効率を改善するためにさらなるスケールメリットを追求することはあまり意味がないということになる。
データセンターの規模と保守運用コスト(1ラックあたり)の関係(IDC提供)
国内データセンターサービス市場は競争が激しくなっており、近年はデータセンター事業者間での事業統合や買収なども目立つ。例えば2015年12月にはエクイニクスがビットアイルの買収を完了した。さらに電力コスト値上がりの懸念や建設コストの高止まりなどの要因により、データセンター投資は次第に投資効果を問われることになる。データセンター事業者が生き残るためには、大規模データセンターにおける運用効率の改善の取り組みが必須になっている。
IDCは「大規模データセンターにおいて保守運用コストを削減するためには、電力コストの圧縮が重要である。電力管理システムの整備、電気設備や空調設備の省エネ運転システムの導入などが進むだろう」と指摘している。
調査対象としたコストの範囲は、データセンター設備の保守や運用管理にかかる人件費、データセンター内に設置するIT機器監視のための人件費、およびデータセンターで使用する電気代。IT機器上で稼働するソフトウェアの運用人件費や、土地や建物の賃料と管理費は含まない。また、コスト総額の比較ではなく、サーバラック1台あたりのコストの比較によって分析した。