Microsoftの個別生産担当ワールドワイドディレクターであるSanjay Ravi氏は、同社はバックエンドを支える役割を担い、自動車メーカーの裏方に回ることを厭わないと述べている。
このアプローチはMicrosoftに勝利をもたらすかもしれない。自動車メーカーは、自ら車を作ろうとしているIT企業と本当に協力したいと思うだろうか。GoogleとFordが自動運転車の開発で協力していると報じられているように、この疑問の答えはまだ出ていない。競争関係にある企業同士の協力は、当面続く可能性が高い。
Microsoftにとっては、自動車の中の体験はスマートフォン市場と似た場になる可能性がある。例えば、Fordの最新のSYNCでは、AppleのCar Playと「Android Auto」のどちらかを選べるようになっている。Microsoftが前面に出て対等に戦うには、この選択肢の1つに入らなくてはならない。それよりも、ドライバーが「Windows」「Android」「iOS」を問わず、どのOSでも「Office」などのソフトウェアにアクセスできるようにする方が簡単だ。
McKinseyは、旧来の自動車メーカーは、今後他の自動車メーカーだけでなく、GoogleやApple、Uberとも競争することになると述べている。実際、サービスから得られる継続的な収入は、自動車業界のもっとも成長が速い収入源になるだろう。GoogleやAppleが自動車に魅力を感じているのには理由がある。自動車は、単純にスマートフォンエコシステムが拡大された場になるという見方ができるためだ。
Microsoftは最高経営責任者(CEO)Satya Nadella氏の下で、モバイル市場でクロスプラットフォーム路線を取ることを選んだ。その狙いは、Microsoftのクラウド、生産性アプリ、PC体験をクロスプラットフォームで提供することだ。Office 365は、Windowsだけでなく、AndroidとAppleのiOSでも利用できるようになった。Microsoftは、自動車用のOSとしても使える「Windows Embedded」を持っているが、Ravi氏は本当の勝利はサービスにあると述べている。
CES 2016での発表は、Microsoftの今後の方向性を明確に示すものだ。
- Microsoftはカーオーディオなどの車載機器で有名なHARMANと協力して、Office 365を車のダッシュボードで使えるようにすることを目指している。「Skype for Business」も同じだ。HARMANは、Microsoftとチームを組んで、ドライバーが路上でOffice 365を利用できるようにすると述べている。HARMANのインフォテインメントシステムでは、無線を用いたアップデートでOfficeを最新に保つ予定だという。電子メールやカレンダーなどのOffice 365のツールは、パーソナルアシスタントの技術を使えば、今すぐにでも便利に使える可能性があるが、今回のパートナーシップにより、Microsoftは自動運転車が普及したときの準備を有利に進められるという点が興味深い。自動運転車が普及した場合、自動車通勤は電車通勤と同じように仕事を片付ける時間になるだろう。もう1つの重要な点は、HARMANの製品が多くのハイエンドカーの頭脳として機能していることだ。実際、RealMoneyのJim Cramer氏は、AppleはHARMANを買収すべきだというアイデアを述べている。Microsoftも、HARMANを買収対象として検討しているのかもしれない。