NECが2016年4月1日付けでの社長交代を発表した。同日からスタートする新中期経営計画(新中計)に向けて「継続性」を重視した動きのようだ。果たして次期社長は確固たる成長路線を描けるか。
記者会見に臨むNECの遠藤信博社長(次期会長)と新野隆副社長(次期社長)
次期社長が語った「新社長としてやるべきこと」
「2016年4月からスタートする新中計は、NECの次なる成長へ向けて非常に大事な時期になる。新社長として誠心誠意、がんばっていきたい」――。NECが12月25日に発表したトップ人事で、現社長の遠藤信博氏から2016年4月1日付けでバトンを引き継ぐ現副社長の新野隆 (にいの たかし)氏は会見の最後にこう語った。社長交代の経緯や理由、次期社長に就任する新野氏のプロフィールなどについては関連記事を参照いただくとして、ここでは新野氏自身が会見で語った「新社長としてやるべきこと」と、NECの今後の成長に向けて筆者が注目する点を述べたい。
新野氏は新社長としてやるべきこととして、次の2点を挙げた。まず1つは「新中計の実行責任」。これについては「成長」と「業務改革」をキーワードとして挙げた。まず成長については、これまでビッグデータ活用やセキュリティ、SDN(Software Defined Network)などの技術やソリューションを重点分野として取り組んできたが、「新中計では重点分野をもう少し絞り込んで投資を集中させ、今後の事業の柱を一層明確にすることによって力強い成長路線を描いていきたい」と説明した。
また、業務改革については、約10万人のグループ社員が「One NEC」として機動的に活動できるようにしたいとした。これは「当社はかねて組織体制からくる縦割りの意識が強かったが、ここ数年でだいぶ解消されてきた。これをさらに一掃してOne NECを確固たるものにしていきたい」との思いからだ。
やるべきことのもう1つは「文化の継承と創造」だ。文化の継承については、優れた人材の英知を結集した「面の経営」によるマネジメントスタイルを今後も引き継いでいくとした。また文化の創造については、NECが持つ優れた技術をグローバルでもさらに価値創造できるようにしていきたいとした。「特に当社が最も注力している社会ソリューション事業において、当社ならではの価値を提供するためのビジネスモデルづくりに10万人が取り組む文化をしっかりと築き上げてきたい」と力を込めた。
次期社長に期待したい売り上げ拡大への執着
新野氏が新社長としてやるべきこととして、新中計の実行責任の中で「成長」を挙げているので、この機会に筆者が注目する点として一言申し上げておきたい。それはズバリ、売り上げ規模の拡大についてだ。
振り返ってみると、NECは2002年に半導体事業を分社化してから、プラズマパネルや液晶パネルなどを採算の厳しい事業を切り離してきた。2011年には個人向けPC事業を持分法適用会社化し、最近ではスマートフォンからの撤退や、インターネット接続サービスのNECビッグローブの売却なども行った。この結果、かつては5兆4000億円を超えていた連結売上高が、2014年度(2015年3月期)には3兆円を割り込むまで縮小した。
こうした規模縮小は、社会ソリューション事業を中核に据え、採算の厳しい事業を整理しながら財務体質の改善を図ってきた結果ともいえるが、これから同社が確固たる成長路線を描くために注力すべきなのは、改めて売り上げ規模を拡大していくことではないだろうか。というのは、売り上げ拡大を図ることこそが、企業の成長に向けた勢いを加速させるからである。
この点については、同社が2015年10月末に開いた2015年度上期(2015年4~9月)連結決算の発表会見で、遠藤氏に見解を聞いてみたことがある。そのときの同氏の回答は次のような内容だった。
「新中計では、前年度比3%程度の年間売上高成長率を想定しており、着実に伸ばしたいと考えている。ただし、売り上げ拡大もさることながら、1つの強いプラットフォームをベースに多くのビジネスを展開する“One to Many”の新たなビジネスモデルの構築を急ぎたい。国内外で社会ソリューション事業を広げていくためには、そのビジネスモデル構築が決め手になる」
3兆円が年率3%伸びれば、新中計終了時の3年後にはおよそ10%伸びることになる。着実に伸ばすのは大事なことだが、ITベンダー大手としてグローバル市場で大きな影響力を獲得していくために、もっと売り上げ拡大に執着してもいいのではないか。その意味でも新野氏の経営手腕に注目しておきたい。