前編では、スキル不足に直面する企業とシステムインテグレータ―(SI)の状況に触れた。そして、それでもなおプロジェクトを成功に導くためには、企業が自らの責任においてプロジェクトマネジメント(PM)を遂行する必要があることを述べた。
今回は、プロジェクトを推進していく上で重要な機能となる「プログラム・プロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)」について解説する。
プロフェッショナルチームがプロジェクトを遂行
前編で述べたように、企業のみならずSIベンダー側も人材(人財)不足や最新スキルの習得に苦しんでいる現状では、特定のSIベンダー1社にプロジェクトを委託する、あるいはプライムベンダーに複数ベンダーをコントロールさせる形式は、リスクが大きい。
しかし複数のベンダーをユーザー企業自らがマネジメントしながらプロジェクトを遂行して成果につなげるのは難易度が高すぎる。ここで威力を発揮するのが企業内で、プロジェクトのマネジメント支援を専門に実施する部門「PMO」である。そして、ここでの重要なポイントは、このPMOが、ユーザー企業でもSIベンダーでもない「第三者」であることである。
SIベンダーの中には、プロジェクト間調整や全体管理を行うPMOを企業への提案のスコープに含めるところもあるが、そのPMOとここでいう第三者が担うPMOは、そもそもの位置づけがまったく異なる。前者は、SIのスコープ、主にシステム構築を中心とした作業をスムーズに動かすための周辺調整を目的とするものが多い。
つまり、自社の担当領域に影響があるところを中心に動くPMOだ。それに対して後者は、企業が駆動したプログラム(複数のプロジェクトの集合体)あるいはプロジェクトの成功のために、必要な打ち手を適時適切に行うことを目的とする。マネジメントする領域は、第1回で述べた、以下の4つの領域である。
システム構築プロジェクト、マネジメントすべき4つの領域
(1)全体管理
スコープ(目的と範囲)、時間、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスク、調達、統合管理の9つの観点のマネジメントを担う。
(2)改革/変革推進
プロジェクトに関連する変革(組織変革、業務改革等)、特にシステム導入と並行で実施すべき変革の推進及び管理を担う。
(3)利害関係者調整
プロジェクトオーナー、関連する業務部門・IT部門の管理者・社員、プロジェクトメンバー、社外関連メンバー等を適時適切に巻き込み、協力的な関係性を維持する。
(4)システム構築
システム構築に関わる作業で関与するベンダーの選定、スコープ調整、パフォーマンス(進捗、品質)の管理などを担う。
われわれが提唱、提供するPMOは、SIベンダーの中に紛れることなく、第三者としてユーザー企業のPMチームの一部としてプロジェクトに参加する。プロジェクトの4つの領域に目を配り具体的な打ち手を実行するためには、さまざまな知見が必要であるため、PMOは多様な能力を持ったメンバーによって構成される。メンバーは連携しあってフェーズごとに濃淡をつけながらPMO活動に参画し、プロジェクトのライフサイクル全体を通してユーザー企業のPMを支援していく。
PMOの立ち位置と構成メンバー