RHELハイブリッドクラウド構成の複雑性解消へ--レッドハットの診断サービス

羽野三千世 (編集部)

2016-01-13 07:00

 Red Hatは、物理マシンと仮想マシン、オンプレミスとパブリッククラウドのように、従来型と新型のインフラが混在する環境において、オープンソースのシステムを一貫して管理する「オープンハイブリッドクラウド」を戦略の柱にしている。

 オープンソースを使ったハイブリッドクラウド環境では、インフラとソフトウェアの組み合わせの自由度が高いために、さまざまな構成上の問題が起こり得る。インフラ構成が複雑化するほど、問題の原因の特定がより難しくなるが、Red Hatが2015年11月に正式リリースした「Red Hat Insights」は、このように組み合わせたシステムを診断し、問題の発生を予防するサービスだ。

 同社 カスタマーエクスペリエンス&エンゲージメント部門 副社長のMarco Bill-Peter氏と、レッドハット グローバルサポートサービス APACサポートデリバリーグループ マネージャーの安間太郎氏に、Red Hat Insightsの概要について話を聞いた。


Red Hat カスタマーエクスペリエンス&エンゲージメント部門 副社長 Marco Bill-Peter氏(左)、レッドハット グローバルサポートサービス APACサポートデリバリーグループ マネージャー 安間太郎氏(右)

膨大なサポート事例を参照してシステム構成上の問題を自動検出

 Red Hat Insightsは、同社が蓄積した膨大なテクニカルサポート事例をもとに、「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」と「Red Hat Cloud Infrastructure(RHCI)」の実装環境において、インフラ構成やソフトウェアの組み合わせ、システムの設定によって起こり得る問題を未然に検知し、具体的な解決策を提示する自動診断サービスだ。「100万件以上の問題解決事例と、3万本以上のテクニカルドキュメント、世界700人以上のRed Hat認定エンジニアの知見をナレッジとして利用している」とBill-Peter氏は説明する。

 Red Hat Insightsは、診断対象サーバに置く「Insightsクライアント」と、Red Hat社側に置かれた「Insightsエンジン」で構成される。InsightsクライアントがRHELシステムやRHCIシステムから構成情報を取得し、内部プロキシを経由してInsightsエンジンにデータを送信。Insightsエンジンが、取得したシステム構成情報と、過去に報告された問題発生事例のナレッジを照合して、そのシステムでこれから発生する可能性のある問題を検出する。ユーザーは、診断結果と、検出された問題の解決策をポータルサイト上で確認できる。

 RHEL運用管理ソフトの「Red Hat Satellite」を導入している場合は、Red Hat Satelliteがプロキシになって各RHELサーバのクライアントが取得した情報をまとめてInsightsエンジンに送信。診断結果もRed Hat Satelliteから閲覧できる。


Red Hat Insightsのトップ画面

 データ収集に際する顧客のプライバシー保護に関して、安間氏は、「Insightsクライアントが収集・送信するデータは最小限のフットプリントだけで、パスワードなどの情報は送信前に削除する。また、ユーザー側で送信しないファイルのリストを作って制御できる仕様になっている」と説明。収集したデータはセキュアなHTTPSプロトコルを介して送られ、次のアップロード時または2週間後に削除される。

 過去の問題発生ケースをナレッジとして参照する仕組みなので、パブリッククラウドや、サードパーティ製のハードウェアやソフトウェアまでを含む構成上の問題まで検出できるのが特徴だ。「例えば、このストレージとこのLinuxとこのOpenStackコンポーネントを組み合わせると不具合が出るとか、Azure上のRHELにこのような設定をしたら問題が派生するといったことを、実際に問題が発生する前に検出できる」(Bill-Peter氏)

問題解決のためのコマンドラインを提示

 ポータルサイト上では、Red Hat Insightsによる診断で検知された問題を、「可用性」「信頼性」「セキュリティ」「パフォーマンス」の4つの領域に分類し、それぞれの問題の「重大度」を提示する。


Red Hat Insightsの「安定性」のタブをクリックした画面

 例えば、「安定性」のページから、問題が指摘されたサーバ名をクリックすると、問題解決のための手順とコマンドラインが具体的に表示される。


「安定性」のページから該当するサーバ名をクリックした画面

 Bill-Peter氏によれば、ベータ版の提供を開始してから1年が経ち、これまでに20万システムがRed Hat Insightsに接続した。現在はRHELとRHCIのみに対応しているが、今後2~3年ですべてのRed Hat製品をサポートする予定だという。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]