クラウドネイティブコンピューティングとは、クラウドプラットフォームによってもたらされる能力を活用するアプリケーションを開発するうえでのアーキテクチャパターンだ。広大な可能性が広がるこういったアプリケーションは、クラウドの弾力性と水平スケーリング、プログラム可能性といった機能の恩恵を受けられるようなかたちで設計される。
コンテナ関連やマイクロサービス関連の機運の盛り上がりにより、クラウドネイティブコンピューティングは業界の注目を集めている。そしてこの分野には、従来型のプラットフォームベンダーから、創業間もない新興企業に至るまで、多くの企業が参入してきている。
VMwareのクラウドネイティブコンピューティングを手がけるグループは2015年12月、この分野で大きな進展を遂げていると発表した。ちなみにVMwareは、Cloud Native Computing Foundationの創設メンバーであり、Open Container Initiativeのメンバーでもある。
では、同社がクラウドネイティブコンピューティング関連で実施してきた投資を見てみることにしよう。
VMware AppCatalyst:開発者向けのデスクトップハイパーバイザ
VMwareのハイパーバイザである「VMware vSphere」は、エンタープライズアプリの実行を可能にするものだ。また、「VMware Fusion」と「VMware Workstation」は、デスクトップ上で仮想マシン(VM)を稼働させているエンドユーザーに向けた製品だ。
マイクロサービスやコンテナ化されたアプリケーションをテストする際には、コンテナがカプセル化されたVMを稼働させるための、軽量のハイパーバイザが必要となる。仮想化及びコンテナ化されたアプリケーションの開発やテストでは現在、Oracleの「VirtualBox」が最も好まれる環境となっている。
VMのライフサイクルを管理するためのオープンソースのツールである「Vagrant」は、VirtualBoxとの相性の良さから、開発者向けの素晴らしいプラットフォームという地位を確立している。VagrantはVMware Fusion上やVMware Workstation上でも動作するが、ライセンスを個別に購入する必要がある。Vagrantの開発元であるHashiCorpは、VMware向けの商用ドライバを販売しているのだ。このことはVMwareを用いて新たなマイクロサービスを開発、テストしようとしている開発者にとって障壁となる。一方Microsoftは、同社のハイパーバイザである「Hyper-V」を「Windows 10」や「Windows Server」とともに出荷している。
VMwareは開発やテストで同社のツールや環境の使用を促進するために、「VMware AppCatalyst」という無償の軽量デスクトップハイパーバイザを発表した。同様の機能を持った商用の製品とは異なり、AppCatalystにはGUIや、仮想化に向けたリッチな管理ツールが搭載されていない。これは基本的に、コマンドラインインターフェース(CLI)とREST APIを用いてVMのライフサイクルを管理する製品だ。AppCatalystは現在プレビュー段階であり、対象OSはAppleの「OS X」のみとなっている。