スーパーコンピュータメーカーのCrayは、2015年の売上高が予想を上回る見込みだと発表した。これは、企業がハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を重視しつつある兆候かもしれない。
同社は、2015年の売上高が7億2000万~7億2500万ドルになるとの見通しを発表した。市場では、同年の売上高を7億1680万ドルと予想していた。Crayの元々の予想では、2015年の売上高は7億1500万ドルとされていた。
同社は一方で、2016年の売上高予想については、8億2500万ドルとしていた従来の見通しを維持した。Crayの最高経営責任者(CEO)Peter Ungaro氏は、同社の業績改善は、主に「各製品の市場でのプレゼンスが拡大している」ことによると述べている。
2015年第4四半期のIT企業の業績に対する予想が全般に低調であることを考えれば、Crayの業績見通しは突出している。アナリストは、スーパーコンピュータベンダーにとって、追い風が吹きつつあるかもしれないと述べている。Crayはハイパフォーマンスコンピューティングのみに特化した企業だが、この市場の主要な企業には、他にもIBMやHewlett Packard Enterprise(HPE)、Dell、Silicon Graphicsなどがある。
NeedhamのアナリストRichard Kugele氏は、調査レポートの中で、次のように述べている。
HPCは今後も、他の市場よりも大きなIT支出水準が見込まれる優良な業界として位置づけられると考えられ、Crayはシェアの拡大と明快な事業執行によって優位に立っている。
もし企業が今後ビッグデータおよびアナリティクスのために専用のスーパーコンピューティングクラスタを構築する傾向が強まれば、Crayなどの企業にとって追い風になる可能性がある。この分野のワークロードの多くはクラウドで実行されているが、企業が自社で所有するデータセットやアルゴリズムに基づいて成功や失敗を重ねるにつれ、重要度が高いワークロードを社内で実行するようになるため、ハイパフォーマンスコンピューティングクラスタが利用されるようになるかもしれない。
Crayの最高戦略責任者であるBarry Bolding氏は、大企業は一貫したニーズのある科学計算やワークロードは、オンプレミスで実行した方が費用対効果が高い場合が多いと述べている。クラウドは、HPCが必要な中小企業向けの選択肢になる。
「クラウドが適している使い道は多いし、柔軟でもある。しかし、継続的な作業がある場合、量が膨大なため、クラウドの方がコストが高くなる可能性がある。継続的な作業に常時スポット価格を払うことはできないし、プレミアム価格でインスタンスを予約し続ける必要があるのも大変だ。1年365日、週7日24時間天気予報のための処理を実行するのであれば、オンプレミスの方がコストは安く済む」とBolding氏は説明する。
Bolding氏は、Crayのハイエンドシステムは、バースト的に使用されるクラウドを補完するものだと述べている。