法制度や各種手続きの未整備による、ビジネスの停滞
「ベトナムに実際に物を入れる」といっても、そう簡単なことではありません。ベトナムでのビジネス展開では、これを実現するのが最も難しい課題の一つです。現地拠点が駐在員事務所の場合には、現地法令の範囲内での活動かどうかという問題が発生する場合もあります。また、輸入ライセンスをはじめとする各種ライセンス問題や行政機関に対する申告や許認可が発生する場合もあります。
そして残念なことに、日本と比較した際に法制度や各種手続きが十分に整備されているとは言えないベトナムにおいて、これらのプロセスにかかる時間と手間は非常に悩ましい問題となります。そのため、これが原因となり、結局は日本側が自社による海外進出を断念し、結果的に現地の代理店に委託してしまうというケースも少なくありません。
このような壁にぶつかってしまうと、現地で精力的に取り組んできた担当者の落胆は大きいものです。担当レベルの感触としては「もう一息」というところで、「会社側の判断として打ち切り」というケースも多いようです。日本側で「いつまでも成果が出ないのであれば、ベトナムで遊んでいるだけ」といった社内批判を、いかに統制できるかもポイントになります。
こうした状況の中で魅力的に映るのが、“ベトナム流のお付き合い”です。詳しくは後述しますが、日本国内で一般的に行われているような業務上のお付き合いは、まず間違いなくベトナムでも許容されますが、ベトナム人同士が行っているような特別なお付き合いがあるのです。
これをそのまま日本人が行ってしまった場合には、将来において問題が生じないとも限りません。この点の差配については、駐在員の腕の見せどころであり、現地スタッフの意見や日本人駐在員同士の情報交換を最大限に生かすべきポイントとなります。
また、地元のキーパーソンとのお付き合いも、外国人にとって欠かせません。直接的な商売だけではなく、現地のベトナム人社会との潤滑油となってくれることも期待できるからです。ベトナムにおいて、日本人は信用してもらえる可能性が比較的高いとは思いますが、ベトナム人も「日本人駐在員は3年もすれば帰国してしまう」ということを理解しています。
そのため、在住日本人にとっては、限られた時間の中で、いかに自己に対する信用を勝ち得るかとともに、自社に対する信用も勝ち得ることに取り組まなければならないのです。日本側でも可能な限りの支援体制を構築して取り組む必要があります。