環境問題を議論するCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が、2015年11月30日から12月11日までパリで開催され、地球規模での「新しい低炭素化社会」に向けた取り組みが本格的に始まっている。参加各国の長期目標の合意として、気温上昇を前工業化時代(1850年ごろ)に対して2度未満に抑えることなどに合意した画期的な合意であった。
日本政府としては、2030年に2013年比で26%の削減(2005年比では25.4%の削減)を目標とした草案を提出した。CO2の総量での排出削減を行う事を着実に実施していかなければ実現できない数値であり、経済・社会・システムやライフサイクルの変革を求めていくこととなる。
今回は3回にわたって寄稿する。本稿は第1回として、データセンター事業者の省エネのための具体的な施策を、当社、アット東京のデータセンターにおける実例を基に紹介する。第2回目では、省エネルギー化したデータセンターでさらなる運用の効率化に向けての重要な分析ツールとなるDCIM(Data Center Infrastructure Management)について述べる。最終回では、1、2回目で述べてきた内容を踏まえながら、データセンターを選択する際のポイントについて考えていくことにしたい。
オフィスビルや工場よりも単位面積当たりでエネルギーを大量に消費するデータセンター事業者にとって、低炭素化社会への貢献、つまり省エネに取り組むことは、さまざまな経験や知恵が必要となってくる。
ここでいうデータセンター事業での省エネとは、お客様に設置してもらったコンピュータシステムに対して、「高信頼の電力を供給しながら安定した空調を提供する」ことを全うしつつ、どのように無駄をなくすかということである。つまり、コンピュータシステムで消費する電力の削減はお客様本位である。
そのため、次の3点を地道に実施することが、目標達成への近道なのである。
- 受電からコンピュータシステムに届けるまでの電力ロスを削減
- 冷やすための熱源(主に冷水供給)システムにおいて省エネ化する
- コンピュータシステムの冷却に際して、効率よく冷やす
では、ここから実際に自分たちが取り組んできたことについて、実例をもとに述べていきたい。
データセンターの空冷機器
アット東京の省エネの歴史は、既存大型センターが2005年に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)に基づき「第1種エネルギー管理指定工場」に認定されたことから始まる。
このセンターは、2001年に運用を開始した当社の中核的なセンターでもあり、順次拡張を予定していた。ついては、データセンターとしての「管理標準」をしっかり策定し、継続的にエネルギー管理をして行くことが重要であると判断し、「原単位」をどう定めるか議論した。原単位は事業所にとっての生産性のバロメータにもなるため、次のように設定した。
原単位=センター全体の合計電力量(年間kWh)÷UPS(無停電電源装置)の1次側合計電力量(年間kWh)
省エネ法では、原単位を年度単位で1%の削減が義務付けられていたため、UPS以外の電気使用量を削減することで、原単位を削減することができると判断し、省エネの推進の判断としてこの原単位を定めた。