データセンターの現場から

データセンター選択のポイント--省エネという世界的な命題をとらえる - (page 2)

伊藤久(アット東京CTO)

2016-02-12 07:00

PUEが2007年に公開

 グリーングリッド(The Green Grid、ICTエコシステム全体にわたり、効率的かつ責任ある資源の活用を促進している)から、設備全体の電力が無駄なくIT機器に利用されているかを測る指標としての「PUE」が公開されたのが2007年。アット東京は、その2年前に同様の管理を始めていた。

 PUEとは、Power Usage Effectivenessのことで、データセンター内のサーバールーム内のエネルギー効率を示す指標。データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値である。PUEの値が小さいほど、IT機器以外の電力消費の割合が小さい、すなわちIT機器を作動させるためのエネルギー効率が高いということになる。(なお当時の既存大型センターの測定可能ポイントが、UPS一次側に限られていたため、PUEの定義とは、若干異なっている)

 このように2005年以降の原単位を比較することにより、省エネの推進状況を評価してきた。この原単位の考え方は、その後運用を開始した各センターにおいて同様に管理され、現在も続いている。

 当時からの対策は、次のようなものだった。

  • 力率の改善(力率=100%への制御)
  • 電気室等への外気導入による冷却(冬季のみ)
  • 蓄熱槽の有効利用
  • 冷水温度管理の徹底
  • 不用空調機の停止など

 データセンターで省エネを実施する際、コンピュータ室の温度管理は厳密に行わなければならない。

 また予備機の停止という、平常時の冗長性を担保できない運用も実施できないため、既存の設備に対しての小さな運転改善であったり、細かな事象に対しての省エネ活動だったり、「地道にコツコツ」やっていくことが重要であった。

東京都条例「地球温暖化対策計画書制度」も影響

 次の省エネ化の大きな対応の変化は、東京都条例「地球温暖化対策計画書制度」であった。

 2008年7月「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」が導入され、削減義務は、2010年4月から開始した。この制度は、EUなどで導入が進むキャップ・アンド・トレードを我が国で初めて実現したものであり、オフィスビルなども対象とする世界初の都市型の制度となった。

 それまでも省エネ対策には地道に取り組んできたが、総量削減の目標を定め推進していかなければならない対策には、大きな戸惑いもあった。そのため、社内の態勢を充実させ、「トップレベル事業所(優良特定地球温暖化対策事業所)の取得を目指し、より一層の省エネを推進していくことにした。

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