設備運用による省エネ
これらの対策により、新センターは竣工時(2012年)には、USGBC(米国グリーンビルディング協議会)のLEED認証(1996年にUSGBCが開発した建物の環境性能評価システム)において、単独のデータセンターとしては国内で唯一、海外でも数少ないLEED Platinumを取得することができた。また、2016年度にはトップレベル事業所への申請も準備している。
最近では、これらの経験を生かし、既存の各データセンターについても「設備運用」による省エネに取り組んでいる。
・既存大型データセンターでの運用
- 冷凍機用冷却塔運用見直し(冷却水温度および冷却塔運転方法の見直し)
- 冷水温度運用見直し(冷水温度の高め運転)
- 成層型空調システムの導入(機器室の送風方式の変更)
・既存センターでの運用
- 空調機へのチムニー設置(空調機吸気温度の上昇)
- 屋外機への夏場における日除け(空調屋外機での効率アップ)
・新センターでの運用
- サーバ室負荷追従型冷却システムにおける制御定数の変更(冷却ファンの最適化)
- 低負荷時の運用(蓄熱槽とF.C.の運用)(効率運転)などを実施し、今後も設備運用の改善によるさらなる省エネ化の推進を計画している

電気の運用
このように省エネ活動に取り組むことは、冒頭の排出量の削減につながるだけでなく、設備運用方法の見直しによる省エネは、エネルギーの有効利用としても重要であり、電力料金の削減(原単位が削減できれば、利益率も向上できる)にも寄与する。
また、エネルギー効率の良いデータセンターを利用することは、結果的に排出量、ひいては環境に配慮した事業者としてもアピールできる。そのためか、昨今のデータセンター選定の項目の中には、エネルギー効率を記載する場合があり、センター自体の堅牢性や信頼性の評価と同じレベルの判断基準となっている。
さて、このような状況下でさらなる効率化のための重要な分析ツールとして、DCIMがある。DCIMとは、データセンターにおいて各種のメータやセンサからの計測値を長期間取り込み、分析するツールで、さらに効率的な運転ができないかを検討していくためには、なくてはならないものとなっている。次回はこのDCIMについて述べていきたい。
- 伊藤 久(いとう ひさし)
- アット東京 常務執行役員、最高技術責任者(CTO)
- 1982年4月、東京電力株式会社入社。2000年6月、株式会社アット東京発足に伴い出向、データセンターの設計・構築運用の技術責任者となり、現在に至る。現在アット東京が運営している全てのセンターにおいて、データセンター本体の建設だけでなく、顧客のコンピュータ室利用の提案から設計・構築・最終動作確認・運用までの技術方の責任者を務める。また、顧客がデータセンターを利用する段階になった後も、省エネを含めた運用を多数提案している。