Salesforceはこの分野への取り組みを続けるなかで、つい最近もMicrosoftのベテランBob Stutz氏を最高分析責任者(CAO)として雇用した。Stutz氏が仕事を始めるのは2月に入ってからとなるが、Salesforceの思惑通りにWaveの普及が進まなければ、4月あたりにさらなる微調整が入ると筆者は予想している。また、BirstやGoodDataをはじめとするサードパーティーのベンダーは、ずいぶん前から「Salesforce向けの最強のアナリティクス」と称する自社製品を手がけてきており、Salesforce以上の洞察を提供できると主張している点も忘れてはならない。
Salesforce ThunderとIoTの戦略
SalesforceはDreamforce 2015で「Salesforce IoT Cloud, Powered by Thunder」を発表した。その際に同社は初期顧客も発表したが、ThunderとIoT Cloudの一般提供はおろかテスト段階にも至っていないことを伝えていた。筆者はその時点で、Thunderが「Dreamforce 2016」まで提供されないだろうという記事を執筆した。そして今回、Analyst SummitにおけるIoT関連のプレゼンテーションとディスカッションの内容から、その思いを新たにした。
何故それほどまでに時間がかかるのだろうか?Salesforceの最高戦略責任者(CSO)であり、ThunderおよびIoT Cloudの陣頭指揮を執っているAdam Bosworth氏(同氏はMicrosoftやGoogleで活躍したこともある経験豊富なベテランであり、The New York Timesの最近の記事では「IT業界の開拓期における伝説的人物」とも称されている)によると、Thunderは初期顧客を交えたパイロットテストをこのホリデーに実施したところだという。
Bosworth氏は同イベントにおいて、SalesforceがThunderとIoT Cloudの準備に「まだ何カ月もかかる」点を強調した。現在のところ同氏は初期顧客に対して、IoTからどのようにして収益を得ようとしているのかといった「数多くの愚かな質問」をしているところだと述べた。また、多くの企業がビッグデータへの投資で「試行錯誤」しているなか、同氏は現実的かつ収益を生み出すユースケースを作り上げようとしているところだとも述べた。
Salesforce Thunderは、大量のバッチデータとともに、1秒間に5万件以上ものイベントを処理するためのデータストリームを取り扱える、エンタープライズサービスバスの一種だと解説されていた。Thunderは、「Apache Kafka」や「Apache Cassandra」「Apache Spark」といったオープンソースのコンポーネントをベースにしているが、SalesforceがIoTのインフラ企業としての地位を確立するところにポイントがあるわけではない。
製品担当プレジデントのAlex Dayon氏は「われわれとともに仕事をしている工業関係や自動車製造関係、コネクテッドデバイスの企業には、(IoTの)導入を軌道に乗せる方法が欠けている」と述べるとともに、「われわれはIoTと顧客の業務プロセスを結びつけなければならない。われわれの考える価値とは、IoTの世界(すなわち機械が発する信号)と顧客エクスペリエンスの間の橋渡しをすることだ」と述べた。
同イベントで幹部らと話をした感触によると、SalesforceがIoT分野における第1世代の製品でもたらそうとしているものに関して、社内での議論が続いているのは明白だ。Bosworth氏によると、顧客は企業が提供できる以上のものを望むという点で、IoT関連製品には危険が付きまとうのだという。同氏は、妻が乗っているコネクテッドカーの方が、同氏の乗っているより旧型のIT化が進んでいない車よりも、修理工場に持っていく回数が多いという点を指摘した。さらに、妻の自動車には数々の「スマートな」センサが搭載されているにもかかわらず、ディーラーはその車のどこが故障しそうなのかを予測することもできないでいるという。