AWS利用の勘所

AWSへの移行要件とは--目標の確認と遂行 - (page 2)

田村謙介(アイレット株式会社cloudpack事業部)

2016-01-25 07:00

システム変更にアジリティを求めたい

 ハードウェアの場合、見通しの難しい予測をしながらスプレッドシートで必要な機器の概算金額を積み上げ、ようやく社内稟議を通して待ち受けているのはサーバなどの調達だ。ラックやスイッチ、無停電電源装置(UPS)の空きも現地調達しなければならない。何度も見積りを取り直した後、さらに購買部の価格交渉が待っている。

 発注するまで2週間、その後、納入されるまでさらに2週間から1カ月。良くも悪くも納入されてから構築に入るまで、1~2カ月の期間があることが多い。もちろん期間があるといっても、サーバ以外のファシリティにまで調達が及ぶ場合は、その設計に相応の時間をとられることもある。サーバ周りの設計やレビューでこの期間はあっという間に過ぎていく。従来のオンプレミスのやり方は概ねこのような流れだろう。

 では、これがAWSならどうだろうか。利用するリソースごとに料金表が決まっており、「SIMPLE MONTHLY CALCULATOR」を利用すれば、30分程度で金額を算定できる。ご存知のとおり調達期間は皆無といっても過言ではない。実際、数クリックで環境が立ち上げる。

 しかし、サーバ周りの設計やレビューという行為自体はなくならないので、それにかかる期間は、これまでのように調達期間と並行にはならず、プロジェクトのスケジュールにそのままのしかかる。この期間をいかに短縮化し、品質を確保しながら速やかに環境を準備するか、プロセスの転換が必要になるだろう。

サーバ投資を抑えてコストを削減

 クラウドでは、平時に合わせてリソースを用意し、ピーク時にシステムを拡張すればよい。クラウドだから、いつでも必要なだけ拡張できるので、これまで悩まされていたリソース不足から開放される、夢のような話だ。

 しかしながら、この夢のような話を実現するためには、柔軟に拡張、縮小できる環境や、運用の作り込みが必要だ。

 フロントエンドのウェブサーバであれば、台数を増減して負荷に対応するケースが多いが、単にサーバイメージをコピーして台数を増やすだけでは済まないことも少なくない。増設したウェブサーバに最新のコンテンツを配信するための仕組みや、ログを保全する仕組みも必要になる。

 バックエンドのデータベースサーバであれば、リードレプリカ機能を利用し、参照系のトランザクションをリードレプリカサーバに逃して、負荷をさばくことがセオリーだ(MemcachedやRedisのような分散型キャッシュシステムを利用する手もある)。一方、フロントエンドのサーバから複数台のリードレプリカサーバへのトランザクションを、なるべく均等になるように分散させるための仕組みも必要になる。

 なお、これらの作業を必要な時に手動で実施するのはなるべく避けたい。人的ミスが発生しやすく、発生した際の影響が大きくなるからだ。こういった作業は自動化しておこう。

 また、想定できるピークにはあらかじめ検討し、対策の準備をしておきたい。企画、コンテンツ、インフラのそれぞれを担う担当が違う場合、システムという側面では横の連携が弱く、ピーク時の対策が後手に回ることが少なくない。リソースを適正化してコストを削減するならば、各ファンクションの横の連携を強くすることをおすすめする。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]