日本株展望

1月21日後場に日経平均を急落させたのは誰か?

ZDNet Japan Staff 2016年01月22日 10時58分

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 1月21日の日経平均は前日比398円安の1万6017円だった。後場寄り(12時34分)には前日比318円高の1万6734円まで上昇していたが、後場に入って売りが増えて急落した。

 今回は、後場に日経平均が急落した理由について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏が解説する。

21日の日経平均の動き

 まず、21日の日経平均の値動きをレビューしよう。日経平均は、前場(午前中)じりじりと上昇しつつあったが、後場(午後)に急落している。午後に入ってから海外勢(産油国と推定される)から大口バスケット売りが入ったと考えられる。

日経平均の21日の日中の動き

楽天証券

 21日後場の大口売りは先物ではなく、現物株に出ていると考えられる。日経平均先物に売りが入る時は、日経平均の下げが大きくなりるが、21日は日経平均よりも、東証株価指数(TOPIX)の下落率の方が大きくなっているからだ(日経平マイナス2.4%、TOPIXマイナス2.8%)。したがって、昨日の売りの主体は、ヘッジファンドの先物売りではなく、産油国の現物バスケット売りと推定される。

 産油国と推定される大口現物売りは、20日、21日と2日続けて出たと考えられる。それが、日経平均がマイナス632円、マイナス398円と2日続けて大きく下がった理由と思われる。20日は朝から1日かけて売ったが、21日は午後に集中して売ったと推定される。

 20日に日経平均がマイナス632円と大きく下がった後、21日午前中は、大口売りを出さずに様子見していたと考えられる。日経平均がリバウンドしてきたところで、後場になって大量の売りを出したと考えられる。

 21日の午前は、海外勢の大口売りが出ていなかったので、リバウンド狙いの買い物で日経平均は少しずつ上昇していたが、後場に大口のバスケット売りが出たことがわかり、再び売り一色に変わった。

追い詰められるサウジアラビア

 どこの産油国から売りが出ているかはわからないが、相当、焦って売ってきていることは間違いない。長年にわたってコツコツと積み上げてきた日本株(および世界の株式)への巨額の投資資金を、急落後の「短期売られ過ぎ」と考えられる水準で、テクニカルリバウンドを待つこともなく強引に売ってきているからだ。

 あくまでも推測に過ぎないが、窪田氏はサウジアラビアが売ってきている可能性が高いと考えているという。サウジアラビア王家は、原油の急落によって相当追い詰められているからだ。

 原油収入が潤沢なサウジアラビアは、これまでバラマキ型社会福祉を行うことで、政権が不安定になるのを押さえてきた。エジプトとともに長い年月、米国と良好な関係を維持してきた。アラブの春で、エジプトのムバラク政権が倒れたのを欧米諸国が中東の民主化と賞賛したのは、サウジ王家にとって重大な危機だった。

 しかし、潤沢な石油収入を生かした社会福祉を維持しているサウジに革命が波及することはなかった。これに不満を持つサウジ内のイスラム教原理主義者から、アルカイダやIS(イスラム国)などの過激派に身を投じる者が絶えないが、それでも社会福祉の充実したサウジアラビアの政情が不安定になることはなかった。

 ところが、今、原油急落によって長期的な国家財政計画が完全に成り立たなくなった。これまで年々膨らませてきた社会福祉が維持できず、急激な切り詰めが始まっている。社会不安が広がるのを押さえるため、サウジが少しでも収入を増やそうと原油を増産すると、それが原油価格の下落に拍車をかけてしまった。何とか収入を補おうと、保有する巨額の金融資産を売ると、世界中の金融資産が急落を始めた。

 サウジアラビアをさらに追い詰めたのは、産油国の動きを先取りしたヘッジファンドが、原油先物を大量に売り、さらに、世界の金融資産の先物を売ってきたことだ。サウジアラビアは、原油先物がどんどん下がり、さらに保有する金融資産の時価がどんどん下がっていくのを見て、パニック的心理状態になったと考えられる。

 一刻も早く、保有する金融資産を換金しないと大変と、大慌てで保有する日本株ファンドなどに強引な解約売りを出してきていると推定される。

 以上は、あくまでも推定で、事実と異なる可能性もある。ただ、産油国の内情を長年よく見てきた窪田氏としては、かなりの部分当たっていると考えているという。

 マスコミで、よくサウジアラビアが戦略的に原油価格を下げているという報道を見る。実際、サウジアラビア政府がそれに近いコメントを出すこともある。シーア派幹部を死刑にし、イランと断交するなど最近強硬策の目立つサウジは、対外的に弱みを見せられないだろう。実態は、かなり追い詰められていると判断できる。

 サウジアラビアに限らず、原油収入に頼って生きてきた産油国は皆苦境に立たされている。原油収入で投資してきた日本および世界の株への売りがいつ止まるか、見極めるのは難しいが、パニック的な売りが収束した時には、株価の戻りが大きくなると窪田氏は予想しているという。

21日の海外市場の動き

 21日のWTI原油先物は、1バレル29.53ドル(前日比2.98ドル高)、NYダウは115ドル(0.7%)高、CME日経平均先物は1万6450円(21日の日経平均終値対比433円高)。ドル円為替レートは、日本時間21日午前6時40分現在、1ドル117.70円だ。これを受けて、今日の日経平均は、反発して始まることが見込まれる。

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