吉田氏はさらに、「両社の統合によって、HPEのネットワーク事業はインフラだけでなく、モバイルによってエンドユーザー視点でのソリューションも合わせて提供できるようになった。これによって、クラウドファーストと合わせてモバイルファーストを強力に推進したい」と強調した。
両社の統合で注目されるのは、表向きはHPEのネットワーク事業にArubaが吸収された形だが、実質的な事業運営の体制としてはArubaが主体になっていることだ。それはこれまでArubaをCEO(最高経営責任者)として率いてきたDominic Orr(ドミニク・オー)氏が、HPEのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーとしてネットワーク事業責任者に就いたことでも見て取れる。
吉田氏とともに会見に臨んだOrr氏は、「HPEの誕生とともにHPE Arubaも数十億ドル規模の事業をスタートアップさせた。今後は市場の成長率よりも3倍のスピードで事業拡大を図りたい」との意気込みを見せた。吉田氏の冒頭の発言にもそうした思いが込められているようだ。
「医療機関のニーズに対応したクラウドサービスを積極的に展開したい」 (日本オラクル 白石昌樹 常務執行役員)
日本オラクルの白石昌樹 常務執行役員
日本オラクルが先ごろ、医療機関向け事業の取り組みについて記者説明会を開いた。同社常務執行役員でクラウド・テクノロジー事業統括公共営業統括本部長を務める白石氏の冒頭の発言はその会見で、同分野でクラウドサービスを積極的に展開することを強調したものである。
白石氏はまず、医療機関におけるこれまでのIT利用について、かつては医療機関向けパッケージをオンプレミス環境で利用するケースが大半だったが、東日本大震災を契機に災害対策としてBCP(事業継続計画)へのニーズが急速に高まったと指摘。そのIT利用の具体策としてクラウドサービスが活用されるようになってきたと説明した。
ただ、一部の大手を除く大半の医療機関では、「IT予算の確保が難しい」「IT担当者が不足している」「データ分析まで手が回らない」「医師・看護師不足が深刻」といった課題を抱えており、それらを解消できるITソリューションが求められているのが現状だという。
そこで同社では、医療機関向けクラウドサービスとしてこのほど、データベースの「Oracle Database Cloud Service」、データ分析の「Oracle Cloud BI Cloud Service」、ドキュメント管理の「Oracle Document Cloud Service」を用意し、積極的に提案していく体制を整えた。これらによって、図に示したような医療情報の活用における「あるべき姿」を顧客に対して説いていきたいとしている。
医療情報に関する現状の課題とあるべき姿像(出典:日本オラクルの資料)
また、会見ではこれらのクラウド環境の活用事例として、福島県いわき市の公益財団法人ときわ会 常磐病院が電子カルテや医事会計システムのデータを有効活用し、経営分析を高度化するための情報系システムを、グループ共通のプライベートクラウドとして構築したケースが紹介された。その内容については、日本オラクルの発表資料を参照いただきたい。
今回の会見で印象的だったのは、日本オラクルが3つのクラウドサービスの利用料金を前面に打ち出していたことだ。
Oracle Database Cloud Serviceはスタンダードエディションで1コアあたり月額4万8000円、Oracle Cloud BI Cloud Serviceは1ユーザーあたり月額3万円、Oracle Document Cloud Serviceは10ユーザーで月額8万8000円と、「当社の料金設定としては非常にリーズナブル」だと白石氏は強調していた。こうした価格戦略を打ち出したところに、日本オラクルの医療機関向け事業への“本気度”がうかがえた。