ネットワークをより柔軟にできるというSoftware-Defined Networking(SDN)に注目が集まっている。SDNを実際に導入するユーザー企業も見られるようになっている。ネットワークをソフトウェアで制御することで何が変わるのか。SDNに関連した製品やサービスを手掛けるベンダー5社に集まってもらい、SDNを取り巻く現状と未来を見通した(第1回)。参加したのは以下の5人。
- 日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業本部 サービス・デリバリー 技術理事 ディスティングイッシュド・エンジニア 山下克司氏
- シスコシステムズ システムエンジニアリング SDN応用技術室 テクニカルソリューションズアーキテクト 生田和正氏
- インターネットイニシアティブ(IIJ) サービス推進本部 サービス推進部長 林賢一郎氏
- NEC スマートネットワーク事業部 マネージャー 勝浦啓太氏
- ネットワンシステムズ ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム シニアマネージャー 藤田雄介氏
“ワークフロー”にまで行けるか
――既存のネットワークは運用管理が大変という点から、やはりSDNは注目されているのでしょうか。
林氏 IIJのお客さまでも、オンプレミスからプライベートクラウドに移行するケースがあり、システム基盤全体を仮想化してプライベートクラウドを作ろうとしているのですが、ユーザー部門に対するITサービスの“ワークフロー”の部分が作れないというお客さまが多くいらっしゃいます。結果として単に仮想化して終わってしまう。それで企業外部のパブリッククラウドに興味を持つ。お客さまがSDNをうまく組み込めないのは、そのあたりがボトルネックになっているのではないかと思います。
IIJ サービス推進本部 サービス推進部長 林賢一郎氏
ここでいうワークフローというのは、たとえばすべてのサーバやネットワークを仮想化したとして、サーバをスケールアウトしなければならないときに、どういうセキュリティポリシーや業務ポリシーのもと、プロセスを組んでスケールアウトするか、また要らなくなったときにどうやって閉じていくのか、あるいはハードが故障したときにどうやってメンテナンスするのか。ユーザー部門のオーダーに応じて、インフラを意識させずこれらを迅速かつ正確に回していくプロセスです。
仮想化技術を使った基盤だからこそ、必要な運用フローがあると思うのですが、そこまで作りきれていない。大きな企業グループであれば、グループ企業にプライベートクラウドの一部を提供しようとしますよね。そうしたときにセキュリティがどういう区分でどういった規定であればいいのか。なかなかそういったところを説明しきれない。そういうところですね。
勝浦氏 そういうところ全部に取り組みたいとおっしゃるお客さまがいるのですが、人の問題とセキュリティポリシーをどうやって作ればいいのかが分からない。IT基盤はできても、運用ポリシーをどうやって作るのかというところまで一緒に考えていかないと、そういうサービスをしていくというのはちょっと難しいかな、というのを日々感じています。
藤田氏 ネットワンのお客さまにそのような環境を構成したケースがあります。SDNを入れて、コントローラを入れて、ユーザー部門がセルフサービスでシステムを作れるという仕組みを構築したお客さまもいらっしゃいます。そのような企業の課題の一つとして、「プライベートクラウドのセルフサービス型の仕組みを作ったのはいいけど、利用率が伸びない」という観点があります。
「ソフトウェアで自動化しましょう」「システム基盤をソフトウェアデファインドにしましょう」が一部目的になってしまい、本来の目的があったにもかかわらず、途中から何かソフトウェアで制御しましょうという目的に変わってしまった。システムのガバナンスを利かせながら、自社のシステム基盤を全社的により多く使ってもらう、それによりコスト効率が結果として上がり、スピードアップにつながるというような本来の目的が途中でブレてしまっているお客さまもいらっしゃいます。
どういう観点が非常に重要なのかというところを、クラウド環境を作るにあたって振り返りながら、検討を進める必要があります。
SDNに関してはスピードアップというところもありますが、「運用がシンプルに簡単にできます」という点とセキュリティに貢献できると思います。