Fintechの正体

実体化するFintech(前編)--幻滅と安定への2016年 - (page 3)

瀧 俊雄

2016-02-02 07:30

 ハイプサイクルとは米Gartnerが提唱する、特定のテクノロジへの期待と、その時間経過に伴う変化を説明する分析手法である。

 その概要は、ある技術(例えばFintech)の黎明期では、何らかのイベントを契機にして、その技術テーマが急速に業界内で取り上げられる。しかし、実用化されているプロダクトがまだ少ないため、期待値がその実態を上回る状態が発生する。その後、期待は一定時点でピークを迎え、多くの技術やアイデアが、その期待値に比した具体性を問われていくフェーズが発生する(幻滅期)。

 幻滅期では、個別の技術は導入可能性が厳しく検証され、実際に満足を提供できるもののみが生き残っていく過程となる。このプロセスを経て、実際のメリットが発揮される実例が増えていく中で、第二世代、第三世代の製品が出ていくフェーズが発生する(啓蒙活動期)。

 そして、最終的に生産性の安定期が訪れる中で、当初Fintechと呼ばれていたテーマが、形を変えて、それがもたらす明確な利便性や競争力を示していくものとなる。

 2016年初頭のFintechは、これらのサイクルとしてはある種の期待値のピークを迎えた状態といえる。実際のFintechベンチャー数の中でも、一定規模以上の規模にスケールした企業は30~40社とまだ限られている中で、個別の業種内での競争も、とりわけ規制監督を受けるベンチャー業態の中では限定的である。今後とも新規の創業が期待される中、技術のユーザーとなる金融機関側における、真に価値のある協業の内容が問われていくフェーズといえる。

 金融機関とFintechベンチャー協業事例は、2015年中にその一端が開始している。これらの結論や横展開が2016年には一部が生まれ始めるものとなる中で、有益な事例については第2世代としての新たなキーワードが生まれていくものと考えられる。Fintechが元来、非常に広い範囲の言葉を対象としたテーマであることに鑑みれば、個別化/専門化の方向性は好ましいものといえる。

 前編では2016年のFintechの動きを検討した。後編では2017年以降のFintechを予測する。

瀧 俊雄
取締役 兼 Fintech研究所長
1981年東京都生まれ。 慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードの設立に参画。自動家計簿サービスアプリ「マネーフォワード」と、会計や給与計算、請求書発行などのバックオフィス業務向けアプリ「MFクラウド」シリーズを展開している。

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