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囲碁の欧州王者に勝利した「AlphaGo」に見るナローAIとグーグルのアプローチ - (page 3)

Nick Heath (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-02-02 06:30

 こういった強化学習アルゴリズムが、「モデルフリー」なかたちで最適解に到達するアクションの関連付けを学習できるということは、「現実世界について何も知らない」という意味も持っている。

 同氏は、そのようなアプローチは迷路を進んでいく際のネズミの脳の働きとは大きく異なっていると述べた。

 「ネズミの行動が環境構造の学習であることは、半世紀以上前から知られていた。ネズミは自らがいる世界の空間構造とその因果関係を学習した後、A地点からB地点に行きたいと思った時に、学習した情報を活用し、報酬を得るための斬新な手順を生み出す」(Stringer氏)

 モデルフリーな強化学習を用いたシステムの学習は、Stringer氏の言葉を借りると「行動学的には極めて制約が大きい」という。

 「環境が変化する、例えばある通路が閉鎖されると、システムはその世界について何の知識も持ち合わせていないため、『この道は閉鎖されている。だから次に最も近い道を行こう』という判断を下すこともできない。こうした対応は、ネズミにはできるがシステムにはできないのだ」(Stringer氏)

 Googleは数年前、画像の中から猫を見つけ出すように学習させたニューラルネットワークを発表したが、これも同様だ。こうしたニューラルネットワークによって人間並みの視覚情報処理システムの実現に1歩近づいたというわけではない。

 「われわれが猫の写った画像を目にした際、画像の中に猫がいるのに気付くだけでなく、その猫を形作っている数え切れないほどの視覚的特徴すべてとともに、それらの特徴がどのように関連し合っているのかも認識する。つまりわれわれの視覚経験は、画像内に特定種類の特徴が存在しているかどうかしか教えてくれないディープラーニングアーキテクチャよりもずっと優れている」(Stringer氏)

 特にこのようなシステムは、同氏が言うところの、人間が持っている特徴をまとめ上げる能力、つまり画像中の特徴がどのように関連し合っているのかを包括的に理解する能力に欠けている。ディープラーニングを応用したニューラルネットワークの多くもモデル化の際、人間が世界の意味づけを行う時に重要な役割を果たしていると考えられている、生物学に基づいた仕組みを取り入れていない。同氏は、これらモデルの多くが、脳の視覚野で行われているフィードバックや、神経細胞(ニューロン)間の電気信号(パルス)の正確なタイミングといったものを排除していると述べるとともに、同センターは視覚野におけるこういった機能の重要性に関する具体的な理論を構築したと付け加えた。

 「われわれはこれらの要素をすべて取り込んだ。これによって少なくとも、人工的な視覚システムにまだ搭載されていない、人間の視覚を特別なものにしている何かに対する深い洞察が得られる」(Stringer氏)

 生物学に端を発するこのアプローチは、DeepMindのそれとは大きく異なっているが、Stringer氏はまだ見ぬ汎用AIを実現するうえで、こういったアプローチが必要になると確信している。

 問題は、Stringer氏も認めているように、この研究が最終的に実を結ぶまでに長い年月がかかるということだ。このような点を重視したため、DeepMindは近い将来に応用できる可能性のあるナローAIに力を注ぐという選択をしたのではないかと同氏は考えている。

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