トライ&エラーを繰り返す:オラクルの開発者向けイベントに見るクラウドの利点

大河原克行

2016-02-01 14:21

 日本オラクルは1月29日、IaaS/PaaS/SaaS「Oracle Cloud」の開発者向けコミュニティーイベント「第1回 Oracle Cloud Developers Meetup」を同社本社で開催した。

 クラウドテクノロジへの関心が高い開発者を対象に、クラウドでのシステム構築や“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”の最新事例を紹介。Oracle Cloudの活用などでアイデアと知見を共有したほか、Oracle Cloud Developersとしてコミュニティー活動についても説明した。会場には約90人の開発者が参加した。

Oracle Cloud Developers Meetupの様子
Oracle Cloud Developers Meetupの様子
日本オラクル PaaS事業推進室 エバンジェリスト 中嶋一樹氏
日本オラクル PaaS事業推進室 エバンジェリスト 中嶋一樹氏

 冒頭、同社PaaS事業推進室エバンジェリストの中嶋一樹氏は、「このイベントは勉強会が中心となる。モダンなエンタープライズクラウドを構築するには何が必要か、あるいは、ベストプラクティスを追求するためには何が必要かという観点から技術にフォーカスし、その解決策として、製品を学んでいく場にしたい」と発言した。

 「コミュニティーとして楽しいものにしていきたいと考えている。知的エンターテインメントという部分を大切にしたい。新たな製品や技術を通じて、気付きがあったり、やってみたいと思うパッションが生まれたりするような活動にしていきたい」(中嶋氏)

 中嶋氏は「今回のゲストスピーカーは、Oracle Cloudのパートナーというよりも、クラウド領域で先行している企業に登場していただいた」として、フレクトの取締役でありクラウド事業部長の大橋正興氏とアイレット執行役員でエバンジェリストでもある後藤和貴氏が講演した。

顧客の関心はフロントエンドのアプリ

 フレクトの大橋氏は、「フレクトは、Herokuにおける国内ナンバーワン企業。Herokuのトレーニング用教材は当社のエンジニアが作ったものである。また、デザインチームがいるのも特徴である」と同社を説明した。

フレクト 取締役 クラウド事業部長 大橋正興氏
フレクト 取締役 クラウド事業部長 大橋正興氏

 「自動車や建機、ヘルスケアなどの当社が関わったクラウドインテグレーション事例では、顧客の目に触れないバックエンド業務向けアプリは、SaaSを活用している。その一方で、顧客との接点になるコンシューマー向けフロントアプリは、HerokuやCloudinaly、AWS(Amazon Web Services)などを使いながらも、接点部分はコードを書いて、きっちりと作り込むスタイルとしている」(大橋氏)

 大橋氏は「一般的には、インフラやミドルウェアにエース級のエンジニアを投入することが多いが、顧客の関心は、むしろフロントエンドのアプリであり、そこにギャップが生まれていた。少ない人数でグループを構成することで、1人の見る範囲が広くなり、フルスタックエンジニアのような活動が求められるようになるが、優秀な人材を顧客の関心事の部分にも投入できるようになる」と述べた。

 2014年夏からはIoT領域に進出。自動車向けIoTシステム「Cariot」を展開しており、すでに430台で導入されているという。

 「クルマにOBD2デバイスを差し込むことで、燃費や走行速度、エンジン回転数、急ブレーキ、急加速などのデータをクラウドに収集できる。データ収集、処理、保存をマネージドサービスで実現。営業車の管理、バス運行、除雪作業車などにも活用できる。IoTでクラウドを使いこなすには、将来のデフォルトになりそうなものを選び、作らずに使いこなすということが大切である」(大橋氏)

 大橋氏はIoTについて「複合的でまだ未知の分野であり、参考になるサービスが少ない。技術がわからないため、アイデアばかりが多いという状況にある。当社は、ソフトウェアとハードウェアの両方の立ち位置におり、デジタルサービスを使いこなす能力があり、早期にプロトタイプを立ち上げることができる点に強みがある。クラウドは武器になる。クラウドを活用してクイックにトライ&エラーを繰り返すことで、より良いものが提供できるようになる」と見透しを語った。

内部統制を保証

 アイレットの後藤氏は、「6年前からクラウド事業を開始し、現在、100人体制の企業である。企業ユーザーがAWSを活用しながら、ビジネスに集中できるコンシェルジュサービスを提供しているのが当社の特徴である。cloudpackとして、設計支援コンサルティング、24時間365日によるMSP運用保守、システム開発を主軸に取り組んでいる。AWSでは、ドル建てでの請求、従量方式であること、クレジットカードでの請求方式となっているが、これを当社が肩代わりして、円建てでの請求、固定方式、請求書発行というサービスを提供している」と同社を解説した。

 後藤氏は「AWSを多くの日本の企業ユーザーが活用しやすいようにすることを目指しており、手厚いサービスが特徴。AWSの導入実績は600社近いユーザーに達している。中小企業、中堅企業、大企業などに幅広くユーザーを獲得しているのも特徴で、現在、5万時間(2000日以上)連続稼働という記録も更新している」と説明。売上成長は2倍になっているという。

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