それでも同社は、IoTという言葉が広く知れわたりつつある中で、これまで使い続けてきたIoEへのこだわりを捨て、現実路線に舵を切ったようだ。ただ、IoEにはモノだけでなくヒトが行う「コト」もつなげる意図が込められているところから、本当はIoEを使いたいという声も少なくない。筆者もその1人なのだが……やはりIoT時代の到来なのだろう。
「サーバやネットワークの切り売りだけでは将来やっていけない」 (IDCフロンティア 石田誠司 取締役)
IDCフロンティアの石田誠司 取締役
IDCフロンティアが先ごろ、同社のクラウドサービス「IDCFクラウド」上でパートナー企業が自社の製品やサービスを自由に公開し、それらを顧客が無償で試用できる機会を提供する「エコアライアンス」と呼ぶ新たな取り組みを始めたことを発表した。
同社の取締役カスタマーサービス本部長兼ビジネス開発本部担当役員で4月1日に代表取締役社長に就任する石田氏の冒頭の発言は、データセンター事業者としての今後の活動に向けた強い危機感を表したものである。
エコアライアンスは、クラウド上にマーケットプレイスを公開し、パートナーと顧客を有機的につなげていこうというものだ。パートナーはこれを新たな販路としてクラウドユーザーの利用機会を拡大することにより、収益力を向上させることができる。一方、顧客もパートナー各社による専門性の高いアプリケーションをクラウド上で自由に試行錯誤することにより、自社に最適なインフラを構築できるようになるとしている。
エコアライアンスの詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは冒頭の発言に続けて石田氏が語った今後の事業展開に向けた意気込みを記しておく。
「今後、当社が厳しい市場競争の中で勝ち残っていくために、クラウド事業者として国内ナンバーワンを目指す姿勢で臨みたい。かつて当社はお客様のサーバをお預かりして運用する“サーバセンター”だったが、今後はIoT(Internet of Things)やビッグデータ活用といったトレンドに対応して、データを集積して活用する真の“データセンター”としてお客様に幅広く利用していただけるクラウドサービスを展開していきたい」
同社はもともとネットワークを起点にデータセンター事業を展開してきた。インターネット回線総量は2015年11月時点で630Gbpsで、3月末には1000Gbpsに増強する構えだ。石田氏によると「この規模はすでに国内ナンバーワン」だという。そのうえで「クラウドはネットワークの下にサーバがあるのが真の姿だ。今後は単にそうしたインフラだけでなく、その上でお客様のビジネスにどれだけ貢献できるかを最大のテーマにしていきたい」と強調した。
エコアライアンスはそうした点で、IaaSからPaaS、SaaSへとクラウドサービスを拡大していく重要な施策といえそうだ。「国産クラウド」のさらなる成長に大いに期待したい。