世界のウェブトラフィックを支える管理機構は現在米国の管理下にあるが、ICANNはアジア太平洋諸国に対して、「複数の利害関係者によるインターネットガバナンスの発展を促す」ためにより積極的な役割を果たすよう呼びかけている。
この発言は、アジア太平洋地域のオンラインプレゼンスが大きくなっており、さらに拡大しつつあることを反映したものだ。ICANNは同地域の各国政府に対して、グローバルインターネットのインフラが今後も重要な機能と企業を支えていけるよう、協力を呼びかけている。ICANNは米国時間1月29日に発表された声明で、同組織は引き続き重要なインターネットの機能に関する管理責任の移行を進める計画に取り組んでいくと述べている。
米国はもともと、2015年9月末までに米国によるインターネットガバナンスの管理を終了し、移行する計画を承認する予定だった。しかし、16年間議論されてきたこの移行が、期日までに実現するかどうかは疑問視されていた。2015年9月30日は、米国政府とICANNのIANA(Internet Assigned Numbers Authority)に関する契約が終了するはずの日だった。IANAの機能には、プロセスのチェックやルートゾーンファイルの変更などの、DNSルートゾーンに関する技術的および管理的機能も含まれる。
ところが米国商務省電気通信情報局(NTIA)は2015年8月、管理を移行するための提案の準備にはさらに時間が必要として、IANAの契約を米国の管理下で1年間延長すると発表した。
当時、NTIA長官のLawrence Strickling氏は、「コミュニティがこの作業を完了し、計画に対する米国政府の審査を受け、承認された場合にそれを履行するには、さらに時間が必要であることがこの数カ月で明らかになってきた」と述べている。また同氏は、2016年9月以降も、「必要に応じて」さらに最大3年間契約を延長する選択肢があると付け加えている。米国政府はIANAの機能を監督する責任を負っている。
ICANNは声明の中で、この重要なインターネットの技術的機能に対する米国の管理を終了するという「長く待ち望まれていた」提案は「完成間近」であり、「数週間以内」に提出される予定だとしている。
ICANNの戦略担当事務総長上級顧問であるTheresa Swinehart氏は、「われわれは、グローバルインターネットコミュニティがほぼ2年間にわたって取り組んできたこの提案を米国政府に提出する予定であり、これが承認されれば、インターネットの発展にとって歴史的な出来事になるだろう」と述べている。
さらにICANNは、アジア太平洋地域特有の課題を解決しながらインターネットインフラを発展させるためには、この地域のリーダーが移行を後押しし、複数の利害関係者が参加する環境を促進する必要があると強調した。
ICANNのアジア太平洋担当バイスプレジデント兼マネージングディレクターであるLow Jia-Rong氏は、次のように説明している。「アジア太平洋地域はこれまでインターネットガバナンスの分野では結果を受け入れるだけの立場にあったが、この2年間で状況は変わりつつある。われわれのコミュニティからの積極的な参加は、自信の高まりと、グローバルな場にステップアップする準備ができていることを示した」(Jia-Rong氏)