海外コメンタリー

デルのオープンネットワーキングシステム向けスイッチOS「OS10」--狙いと強み - (page 2)

Keith Townsend (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-02-16 06:30

ユースケースという観点からの考察

 Arista NetworksやCumulus Networksといった企業は、標準的なLinuxアプリケーションの実行機能をかなり前から自社のソリューションに取り込んでいる。しかしDellはOpen Compute Projectが推進する「Switch Abstraction Interface」(SAI)をサポートしているため、さらなる柔軟性を実現できるはずだ。筆者は、「VMware NSX」といったソリューションと将来的に統合されるのではないかと期待している。

 スイッチ機器上でLinuxコードを直接実行できるようになれば、NSXのようなネットワーク仮想化ソリューションにつきものの弱点の多くを解消できる可能性がある。NSXはネットワークのセグメント化や自動化を可能にする強力なプラットフォームだ。しかしそのメリットは、仮想化されたインフラ内を流れるトラフィックに限定される。つまり、2つの物理ホストの間でやり取りされるトラフィックは、NSXではフィルタリングできない。このため、顧客が2点間でのL2レベルのフィルタリングを実現したいと要求してきた場合、ネットワークエンジニアはL2レベルで物理的なファイアウォールを構築しなければならない。しかし、L2レベルでの物理的なフィルタリングは、コスト面を考えた場合、スケーラビリティに問題があるのだ。

 スイッチ機器上でのLinuxコードの直接実行が可能になれば、DellはVMwareの協力の下、NSXファイアウォールのコードをスイッチ上で直接稼働させることもできるはずだ。これで、単一物理ホスト上にハードウェアポートを1つ設定するというシンプルな実装で、NSXのL2フィルタリングが物理ホストに適用されるようになる。この場合の論理上の制約は、物理スイッチの処理能力となる。筆者は、Intelのx86にData Plane Development Kit(DPDK)テクノロジを統合することで、顧客の抱えるこれら課題のほとんどを克服できると考えている。

 仮想化インフラを支える物理層の管理も弱点と言える。「Cisco Application Centric Infrastructure」(Cisco ACI)といったテクノロジを導入しない限り、ネットワーク管理者は物理ネットワークと仮想ネットワークの管理に別々のツールを使う必要がある。しかし、物理スイッチ上で仮想ネットワークのコードを実行できれば、ネットワークベンダーは物理ネットワークと仮想ネットワークの管理を簡素化できるようになるはずだ。

競合に関する考察

 冒頭で述べたように、Dellは専用機器におけるハードウェアとソフトウェアの分離を目指す業界初のネットワーク企業というわけではない。Aristaや、ストレージプロバイダーのCoho Dataはずっと前からネットワークを意識したストレージ機器を提供している。また、現在ではNokiaの傘下にあるNuage Networksも数年前から、x86のワークロードを実行できるハードウェアプラットフォームを提供している。しかしDellは、EMCおよびVMwareの買収によって拡充される大規模なディストリビューションチャネルという武器を手にしている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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