日本株展望

マイナス金利導入でも円高が進んだ理由

ZDNet Japan Staff 2016年02月08日 10時37分

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 2月1日週の日経平均は前週比マイナス699円の1万6819円だった。米景気に減速感が強まり、1ドル116円台まで円高(ドル安)が進んだことが嫌気された。先週末のCME日経平均先物(3月限)は、1万6560円(日経平均終値対比マイナス259円)まで下がっており、今週も下値波乱が続きそうだ。

 日銀のマイナス金利導入にリフレ(インフレ期待を高める)効果はなく、かえってデフレマインドを深めた結果となった。発表中の10~12月期決算で、決算発表と同時に通期(2016年3月期)業績見通しを下方修正して売られる銘柄が多いことも、警戒感を強める要因となっているという、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

先週、円高(ドル安)が進んだ理由

 2つの理由がある。

(1)マイナス金利適用となる当座預金が10兆円のみと判明したこと

 1月29日にマイナス金利導入が発表された直後は、金融機関が日銀に預けている当座預金260兆円のうちのかなりの部分が流出するイメージが広がり、円安が進んだ。ところが、日銀が2月3日にマイナス金利が適用されるのは当面10兆円のみと発表すると、実際に動くお金は少ないことがわかり、円高に反転した。

(2)米景気減速を示す指標の発表が続く

 先週、発表になったISM製造業景況指数は予想通り低調で、さらに非製造業景況指数も低下した。先週末に発表された1月の雇用総計は、「非農業部門雇用者増加数」が予想以上に低下し、ネガティブだった。米国の追加利上げが遠のく見通しが広がり、ドル安(円高)が進んだ。

マイナス金利導入の影響を受ける当座預金は10兆円と少ない

 1月29日、日銀は、「金融機関が日銀に新規預ける当座預金にマイナス0.1%の金利を適用」と発表した。日銀にお金を預けると0.1%の金利をもらえていたのが、逆に0.1%の金利を取られることになった。黒田日銀総裁は記者会見で、「必要となれば、さらに金利を引き下げる(マイナス幅を拡大する)」と述べ、マイナス金利を浸透させる強い意思を示した。

 これを受けて、金融市場では、金融機関が日銀に預けている当座預金(約260兆円)のかなりの部分が日銀から流出し、金融市場に流れ込むというイメージを持った。行き場を失ったお金が、金利の高い外貨にも流入するという連想から円安が進んだ。ただ、この時点では、マイナス金利が適用される当座預金が具体的にいくらになるか、明確にはわからなかった。

 日銀が2月3日に出した追加の説明資料で、以下の点が明らかになった。

  1. 金融機関がこれまで日銀に預けていた当座預金のうち約210兆円には、これまで通りプラス0.1%の金利をつける。つまり、260兆円の当座預金ほとんど(210兆円)に対して、これまで通り、0.1%の金利を支払うわけで、この210兆円はこれからも、そのまま日銀に滞留すると思われる。
  2. マイナス金利を適用するのは当面10兆円のみ。先行き、30兆円まで拡大する可能性はある。
  3. 残りの40兆円(準備預金)については、これまで通り、金利は0.0%とする。

 日銀は、1年間に国債の保有高を80兆円増やす「量的金融緩和」を継続中だ。つまり、日銀は、毎年80兆円以上(注)の国債を、金融機関から買い取り続ける必要がある。

 (注)日銀は、毎年、80兆円に、保有国債のうち償還を迎える金額分の国債を金融機関から買い取ることによって、国債の保有高を80兆円増加させる。

 放っておくと、日銀に預け入れられる当座預金は、年80兆円のペースで増加していくことになる。増加分すべてにマイナス金利を適用するならば、マイナス金利が適用される当座預金は1年後に80兆円以上に増える可能性がある。ところが、日銀は、当面、マイナス金利を適用する当座預金は10兆~30兆円の範囲で調整するとしている。

 ということは、日銀から流出してくるお金もその範囲にとどまる可能性がある。年80兆円の金融資産を買い取っても、その大部分が、そのまま日銀に滞留する現状は、すぐには変わらないことがわかり、為替市場で、円高が進んだ。

 日銀のマイナス金利導入で、長期金利は大きく低下した。9年までの年限の国債はすべてマイナス金利になった。10年国債の利回りは先週末で0.02%まで低下した。

 金融機関が日銀に追加で預ける当座預金にマイナス0.1%の金利が適用されるため、金融機関は、プラスの利回りが出る国債を簡単には日銀に売らなくなる。日銀は、年間80兆円国債の残高を増やす必要があるので、何が何でも、金融機関から国債を買い上げなくてはならない。10年国債利回りまで、利回りがマイナスになるところまで値を釣り上げないと、日銀は国債を買い集めることができなくなる可能性がある。

 日銀のマイナス金利導入で、株高と円安を進めることはできなかったが、唯一、長期金利だけは大きく低下させることができた。

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