日本株展望

ヨーロッパの信用不安について

ZDNet Japan Staff 2016年02月16日 10時26分

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 2月15日の日経平均は1069円(7.1%)高の1万6022円となった。先週の下げが急で、テクニカル指標で短期売られ過ぎのシグナルが出ていたので、大きな反発となった。

 今日は、最近話題になっている欧州の銀行不安について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

欧州の銀行不安がなぜ今、蒸し返されるのか?

 欧州には、高水準の不良債権を抱える銀行が多数ある。それは、今に始まった話ではない。米国の不動産(住宅)バブルが崩壊し、リーマンショックが起こった時、欧州でも不動産バブルが弾け、欧州の銀行は軒並み多額の不良債権を抱えた。その時から、欧州の銀行の不良債権問題は続いている。

 これまで長い年月をかけながら、少しずつ不良債権の処理を進めてきたところだ。

 米国と欧州で、不良債権の処理方法が異なる。米国は、多数の銀行を破綻させ、違反行為のあった銀行経営者を次々と逮捕して短期に処理を進めた。欧州は短期に処理せず、問題を長引かせている。日本の1990年代の不良債権処理と似ている。

 欧州の銀行の財務内容は少しずつ改善に向かっていたが、ここに来て、再び欧州の銀行不安が蒸し返されることになった。きっかけを作ったのはドイツ銀行だ。ドイツ銀行は、規制上の罰金や訴訟費用がかさみ、2015年に過去最高の68億ユーロ(約8700億円)の赤字を計上した。

 ドイツ銀行の財務への不安から、同行が発行するCOCO債と言われる社債が急落した。それが引き金となって、イタリアのウニクレディト、スペインのサンタンデールなど不良債権比率の高い欧州の銀行の発行するCOCO債が一斉に急落した。

 ECB(欧州中央銀行)が金利のマイナス幅をさらに拡大する姿勢を示していることも影響した。金利のマイナス幅拡大で、欧州の銀行利ざやがさらに縮小し、不良債権処理が今後思うように進まなくなる懸念を生じた。

 ドイツ銀行のケースはさらに深刻だ。ロンドン銀行間金利(LIBOR)の不正操作で、米英当局などから既に1兆円以上の制裁金を課せられている。三菱UFJ(8306)は2013年にドイツ銀行から、米国での不動産向け貸し出し資産を総額37億ドル(約4200億円)で買収した。財務悪化で資金を必要とするドイツ銀行が売る金融資産を、海外事業拡大を進める三菱UFJが買い取ったものだ。

 ドイツ銀行は信用不安を収束させるため、自社が発行する通常債券約6000億円分を市場から買い戻す方針を発表した。ドイツ銀行が危機的な状況にないことを示すための買い戻しだ。これで危機的な状況にないことは示せるが、ドイツ銀行の財務が悪化している事実は変わらない。

欧州のソブリンデット(国家債務)問題は改善歩調

 欧州には2つの信用不安がある。1つは銀行の不良債権問題、もう1つは過重債務国のソブリンデット問題だ。リーマンショック時、ギリシャを始めとする欧州過重債務国のソブリンデット問題も、世界の金融市場に不安を撒き散らした。特に、頭文字をつなげ「PIIGS(ピーグス)」と呼ばれた5カ国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の信用が懸念された。

 ただし、その後、欧州各国は緊縮財政を続けて、経常赤字を縮小し、財務の改善を進めてきた。これからも欧州のソブリンデット不安が蒸し返すリスクはあるが、問題自体は、今のところ改善に向かっているところだ。

欧州主要国の経常収支黒字(赤字)の名目GDPに占める比率
2007年~2015年(出所:IMF、2015年はIMF予測)

(出所:IMF、2015年はIMF予測)
(出所:IMF、2015年はIMF予測)

 リーマンショック直後に、経常収支赤字がGDPの14%に達していたギリシャ、10%に達していたスペインとも、緊縮財政を続けた効果で、2013年から経常黒字に転じている。

 一方、ブラジルなど資源国では、資源価格の急落を受け、経常収支が大幅に悪化している。中国も、経常黒字幅が大きく縮小している。

資源国、中国の経常収支黒字(赤字)の名目GDPに占める比率
2007年~2015年

(出所:IMF、2015年はIMF予測)
(出所:IMF、2015年はIMF予測)

欧州の信用不安より、資源国の信用不安を警戒すべき

 欧州の銀行不安が世界的な危機に発展する可能性は低いと窪田氏は話す。過去8年で見ると、資源国の信用が低下する中、欧州の信用不安は緩和する方向に進んでいたからだ。

 国名を挙げると、PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の信用不安が緩和する中で、ベネズエラ、ブラジル、南アフリカなどの信用が低下した局面であったといえる。また、資源国ではないが、ウクライナの信用も低下している。

 今は、欧州よりも資源国を心配した方が良い状況といえる。資源関連のファイナンス、債務の多い資源国の信用不安には、引き続き注意が必要だ。

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