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2016年の「IT人材」と採用

事業会社に“シェフ”が足りない--2016年に求められる「IT人材」とは - (page 3)

竹内真

2016-04-04 07:00

 もちろん、レストランの方針によっては同じメニューの安定供給を重視することもありますが、他店との競争にさらされているなどの要因があり、常に新しいメニューを提供したいと考えるならば、旬の食材や調理法を理解している"シェフ”が必要です。

 エンジニアが足りないという事業会社は、多くの場合、この“シェフ”が足りていない、という状況に似ています。企業は常に攻め続ける必要がありますが、自ら顧客のニーズをくみ取り、発想し、実現させる“シェフ”の役割を担えるエンジニアはさほど多くないからです。IT人材の不足が話題になる背景には、単に人手が足りないという話ではなく、こうした側面があるのだと感じています。

今、求められる「IT人材」とは

 事業会社の多くは、顧客のニーズをくみ取る力と料理のスキル、その2つの力を持った“シェフ”を求めています。しかし前述した歴史的背景があり、日本では「作ることを成果として認められてきたエンジニア」が多く、「作ったものを収益化しようとするエンジニア」が育ちにくい土壌ができあがったと考えています。

 当然ですが、このふたつのエンジニア像には大きな隔たりがあります。単に技術を磨けば“シェフ”になれるのではなく、メンバーと信頼関係を築く力だったり、ユーザーの行動を徹底的に突き詰めて考えてみたりと、異なるベクトルでの努力が必要です。

 そもそも売り上げに貢献できるサービスは、「もっと楽をしたい」「もっと認められたい」というような人間に生来備わっている欲望をくすぐるものでなければなりません。そういうサービスのことを、「色気がある」とか「セクシーだ」と形容することもありますが、人の感情を理解できないエンジニアにとって、セクシーなサービスを作り出せる確率はとても低いものかもしれません。

 一方で、エンジニアが普段向き合っているコンピュータには感情がありません。命令されたことに対しては正しく動作するので、エンジニアは「エラーが返ってくるイコール自分の命令が間違っている」と認識せざるを得ません。

 人間社会の中で起こるような不条理なことは、ほとんど起こりません。こうした合理性が当たり前の環境で多くの時間を過ごしているので、高い技術力を持つエンジニアでも、ビジネス上の不条理さに納得感を持てないことがあります。

 人間の欲というものに向き合わなければスケールするサービスを考えることができず、コンピュータと向き合う時間がなければコードを書けるようにはなれないでしょう。そのバランスをどうとるのか、悩ましい部分があります。

 ちなみに私の考えでは、エンジニアが「きれい」なコードを書く必要はありません。もちろん、誰にも理解できない、改修に膨大なコストがかかってしまうような「汚い」コードは明らかにNGですが、時代の流れから見ても「きれい」なコードを書ける“だけ”のエンジニアに対するニーズは縮小しています。

 今、強く必要とされているのはオープンソースの概念や「GitHub」の台頭などからも分かる通り、さまざまな部品を掛け合わせて、即座に新しいサービスを生み出せるエンジニアやアーキテクトです。自分1人で膨大なプログラムを書けるスーパーエンジニアはもちろんですが、既にインターネット上に存在している材料と道具をうまく使いこなし、いち早くサービスを作り上げられる――そんなアレンジ能力に長けた人材が求められる時代になってきています。

 アレンジ能力を鍛えるための鍵は、どれだけ多くの情報を日々キャッチアップできているかどうかと、さまざまな新しいものに対してどれだけのトライ&エラーがあるかです。インターネットや技術書の情報だけでなくITスペシャリストたちの人脈などから、いかに生きた情報を引っ張ってくることができるか。人間くさい不条理さに負けず、人と人とのつながりをも強めていける人材こそが、「IT人材」として強く求められているのではないかと考えています。

 次回はエンジニアの採用や組織作りについて、創業から7年目を迎えるビズリーチを事例として考えたいと思います。

竹内 真 / 株式会社ビズリーチ 取締役
2001年、電気通信大学情報工学科を卒業後、富士ソフトABC株式会社(現・富士ソフト株式会社)に入社し、エンタープライズサービスを中心にさまざまなソフトウェアを開発。2007年に富士ソフトを退職後は、フリーエンジニアとして株式会社リクルートの基盤フレームワーク開発などに従事。2008年には株式会社ビズリーチの創業に参画し、CTOとしてサービス開発を手掛ける他、自社のエンジニア採用や人事制度構築を行う。現在は株式会社レイハウオリ代表取締役と株式会社ビズリーチの取締役を兼任する。社外では、mobyletメインコミッターなどのOSS活動や、各種講演会やセミナー講師としても活躍。
運営サービスは、日本最大級の求人検索エンジン「スタンバイ」、管理職・グローバル人材の転職サイト「ビズリーチ」、20代のためのレコメンド型転職サイト「careertrek」 など

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