――日本では2016年にスタートしたマイナンバー制でのセキュリティを懸念する声がある。また、アノニマスなど日本の企業や政府を狙った国際的なサイバー攻撃も増えている。
日本の課題はグローバルな課題と同じと言っていいでしょう。これまでのセキュリティは脅威を発見して保護することでした。悪い人を外に追い出すというものです。残念ながら、悪い人がいなくなることはなく、さらにずる賢くなっているというのが現実です。つまり、すべてのデータを保護できるという前提を立てるのは現実的ではなくなってきているということです。
これまでの”悪い人を外に追い出す”という対策に加えて、社内のデータの中で最も機密なデータはどれかと識別し、それに対しては二重、三重のセキュリティ対策を講じる必要があります。クレジットカード情報はこれに分類され、マイナンバーもおそらくこれに分類できると思います。
また、プライバシーで何が起こっているのか、マーケティングキャンペーンはどのようなものか、どのように顧客と対話しているのかなどについても理解しておく必要があります。
――2015年、ハイテク企業ではダイバーシティ(多様性)が1つのトレンドとなった。世界的にみると大企業における女性CIOは20%以下といわれているが、女性を増やしていくためになにをすべきか?Symantec社内での取り組みは?
私自身はとてもラッキーでした。これまでDisney、Ciscoなどの企業に勤務しましたが、継続して自己開発ができる職場だったからです。
アドバイスとしては、自分が自分になれる場所を、自分が成長できる社風のある環境を選ぶことです。ミレニアル世代にとっては当たり前でしょうが、少し世代が変わるとそう考える人は少ないかもしれない。会社に価値をもたらし、貢献するためには、自分らしく成長できる環境で働く必要があります。
ITの世界に女性を増やすことは簡単ではないと思います。鍵を握るのは教育です。中学、高校の女子がSTEM(科学、技術、工学、数学)を選ばない理由は、クールとかかっこいいというイメージがないから。ここを変えることができれば、パイプラインができます。子供たちは早い段階で、自分に何が向いているのか、(そのキャリアに)どのようなチャンスがあるのかわからないことがことが多く、しっかりとITの魅力を伝えていく必要があります。
Symantecでは2020年までにダイバーシティを2014年比15%改善させるという目標を掲げています。女性は現在、全体の27%を占め、リーダーシップでは25%。女性向けには、SWAN(Symantec Women’s Action Network)というプログラムがあります。入社前からのプログラムで、私もこれに積極的に参加しています。
男女比率を変えるのは簡単なことではありません。まずは、Symantecで女性が成長できる環境を作りたいと思っています。具体的には、VSEM(Vison Strategy Execution and Metrics)という方法を用い、女性の環境を作るという目標に対して戦略を作り、この戦略をサポートするアクティビティを展開するというものです。
既に、社内にたくさんのアクティビティやミーティングがありますが、目的がないものも多い。取り組みを構造化し、目的をもったアクティビティを展開するようにしています。何人のメンバーを集めたいのか、昇進した女性の数は何人かなどの成果を追跡しています。
――多様化を推進することで、どのようなメリットが得られた?
考え方の多様化です。違う考え方を学ぶのは刺激的なことです。通常、結果は10倍良いものになるでしょう。全員が最終的に合意するというコンセンサスでは、結果は希釈されます。合意できないとしても、新しい考え方を学ぶことは視野を広めます。