進むBIのセルフサービス化

変わるデータ分析に対するニーズ--BIの「セルフサービス化」進む

生熊 清司(ITRアナリスト) 2016年02月18日 07時30分

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2016年に注目すべきIT戦略テーマ

 最初に、ITRが選定した2016年に注目すべきIT戦略テーマを紹介する。ITRでは毎年、投資動向調査の結果、クライアント企業から受けるインクワイアリー、ブリーフィング、コンサルティング、依頼調査などの内容を加味し、企業にとって重要と考えるIT戦略テーマを選定している。

 今回は「攻めのIT」と「守りのIT」の2つに分け、各5テーマを選定した(図1)。なお、「攻めのIT」は主に外部(顧客)に対してデジタル技術を活用することによる価値提供の創造・拡張に結び付くテーマであり、「守りのIT」は内部(社内)に対する競争力の高いITサービスを社内に安定供給し、企業の競争力を下支えするためのテーマとなっている。

図1.2016年に注目すべきIT戦略テーマ 出典:ITR
図1.2016年に注目すべきIT戦略テーマ 出典:ITR

 「攻めのIT」には、デジタルイノベーションに関わるテーマが中心となっている。これまで、デジタライゼーションに関しては、調査・研究や体制整備は行っても、具体的な取り組みを行っている国内企業は少なかったが、米国でUberが注目されたように、国内でも農業などこれまでデジタル化と縁遠かった分野でも、ビジネスモデルの異なるデジタル企業の参入によって既存の業界に大きなインパクトを与える例が登場しており、2016年以降は、あらゆる企業においてデジタライゼーションの必要性が急速に高まることが予想される。

 一方、「守りのIT」には、現行のIT基盤の高度化や管理体制の強化に関するテーマが中心となっている。特に、大企業であれば業種を問わず重視すべき普遍的なテーマが多い。しかし、見方を変えれば、これらのテーマは「攻めのIT」を実現するための基礎となる施策と言える。

 ここに挙げた10のテーマに「データ分析基盤の再構築」が入っているが、攻めのITに挙げた「デジタルマーケティングへの注力」「イノベーションおよびビジネス強化のためのIoTの推進」「SoEためのシステム構築手法の確立」や「守りのIT」に挙げた「多台数化に対応したモバイルワーク支援体制の確立」「データライフサイクル管理体制を視野に入れた情報漏洩対策の強化」なども間接的ではるが、データ分析に関係している。

 なぜならば、デジタライゼーションとは、収集したデータを分析することで得た情報をビジネスに生かし、データに基づいた経営を行うことに他ならないからである。したがって、攻めのITを支えるデータ分析基盤の再構築まで以上に重要となり、その主要な要素であるBIツールに対しても、再考が必要となると考える。

変わるデータ分析に対するニーズ

 近年、企業においてデータ分析への関心が高まっている。この理由としては、ビジネス環境の変動の激化と多様化、複雑化があげられる。現在の企業を取り巻く環境を見ると、もはや経験や勘を頼りに舵取りをすることは不可能と言える。

 変化が著しく先行きが不透明であるほど、また、ビジネスが多様化し、複雑化して全容を捉えることが困難であるほど、現状を正しく捉えることで将来を見通し、いち早く手を打つことが競争力の源泉となることは火を見るより明らかであろう。

 過去の大量生産、大量消費の時代では「良いものを作れば売れる」と考えられていた。したがって、競争の源泉は製品の性能や品質にあり、消費者ニーズや経営環境の変化は一定の範囲に収まっていることがほとんどで、データ分析に対するニーズも定型的な指標に対する時系列的な変化を確認できれば良かった。

 しかし、現在においては、多様化し、変化し続ける顧客ニーズや価値観を分析し、グローバルな競争においては、競合他社の動向、為替や資材の市況、国際情勢などが日々変動しており、データ分析に対するニーズも大きく変化している。

 現在、多くの企業がビジネス課題としているものとしては、「ビジネス・イノベーションの創出」「ビジネス・スピードの向上」「ビジネス範囲の拡大」そして「コストの削減」の4つであろう(図2)。

図2 現在のビジネス課題 出典:ITR
図2 現在のビジネス課題 出典:ITR

 現在、多くの企業が、不確実な経済環境に対応するために、新たな成長の糧を模索しており、ビジネスにおけるイノベーションを求めている。

 また、製品や技術およびサービスのライフサイクルが非常に短くなっている現代においては、ビジネス・スピードは成功のための非常に重要な要素と言える。同じ技術やアイデアであっても、より早くマーケットに送り出した企業が大きな利益を獲得する可能性が高いからである。

 いまや企業活動は自社だけで行える時代ではなく、多くのパートナー企業との協業が必須となっており、その範囲も国内だけでなく世界に拡大している。直接顧客も国内だけでなく世界に分散している企業が多い。

 また、B2B型ビジネスを行っている企業でも、直接顧客だけでなく、一般消費者(コンシューマー)の行動を理解する必要が生じている。例えば、スマートフォン用の部品を生産しているメーカーは、納入先からの発注量だけでなく、消費者市場での売上動向を分析し、生産量や製品開発の計画を行わなければならない。

 そして、企業におけるコスト削減は期間限定のプロジェクトではなく、当たり前の永続的活動となっている。つまり、4つのビジネス課題のうち、コスト削減を実行しつつ残りの3つを遂行する必要がある。

 では、前述の4つのビジネス課題に対してデータ分析基盤はどのように貢献することが求められるのであろうか。次世代データ分析基盤に求められる要件を示したのが図3である。

図3 次世代データ分析基盤に求められる要件 出典:ITR
図3 次世代データ分析基盤に求められる要件 出典:ITR

ビジネス・イノベーション

 単なる思いつきで、これまでの常識を覆すようなアイデアやビジネスモデルが生み出される確率は非常に低い。イノベーションを創成するには、データに基づく科学的アプローチが必要である。多種多様なデータを組み合わせて分析した結果から得た知見に基づき、新たなアイデアをひねりだし、その成功可能性を検証する、という「仮説検証」の仕組みを構築できれば、企業におけるイノベーション創出の確率の向上に貢献できる。

ビジネス範囲の拡大

 ビジネスパートナーや顧客企業が世界規模で分散・拡大し、かつコンシューマー動向も注視しなければならない現代のビジネス環境下においては、パートナー企業が保有するデータやコンシューマー動向などの多種多様なデータを分析することが重要となる。

ビジネス・スピード

 スピードが非常に重要な時代において、データ分析を行い、その結果を実際のビジネスに活用するまでの準備に数カ月といった期間を要することは許されない。分析対象となるデータおよびシステムが新たに追加されたり、変更されたりした場合でもビジネスが求める時間で対応することが重要である。

コスト削減

 データ分析にかかるコストを削減するには、必要となるシステムの開発や保守にかかるコストを削減することが効果的である。さらに、利用者を専門家だけでなく、すべての従業員に広げるためには、使い勝手の向上による、現場での作業に伴うコストを削減することも重要となる。

 残念ながら、これまでのBI製品の多くは、これらの要件を満たしているとは言えなかった。したがって、これまで以上に多種多様なデータが利用でき、さらに、データの追加、変更、組み合わせといった作業が簡単かつ迅速にできる必要がある。

 そこで登場してきたのは「セルフサービスBI」と呼ばれる新しいタイプの製品である。次回は「セルフサービスBI」製品によって変化し始めているBI製品市場について述べる。

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