まず、ブロックチェーンの現状について考えてみよう。そもそも、完全に定着したブロックチェーンの実装であるビットコインは、実際に役に立つことが証明されているが、スコープと拡張性の面では限界がある。銀行業界ではこの1年ほど、ブロックチェーンの技術について検討が進められており、世界最大級の銀行の多くが、この技術の使い道について検討する組織R3 Blockchain Consortiumに参加している。GartnerのアナリストRay Valdes氏は、それでも、IBMがプロジェクトに参加することにはある程度の重みがあると述べている。
「これはブロックチェーンに関する取り組みが、銀行業界や金融サービス業界に広がっただけでなく、他の業界に対しても拡大しつつあることを示す1つの指標だと言える」とValdes氏は言う。
次の問題は、IBMはブロックチェーンに対して何か新しい貢献ができるのかということだ。従来のブロックチェーンに関する取り組みの多くは、特定の業界に焦点を絞っているが、Valdes氏の考えでは、IBMとHyperledgerプロジェクトは、「垂直的な技術ではなく、水平的な構造」を作ることによって、この技術に対する関心を拡大しようと試みている。
今回の発表の中で、最も重要なのはHyperledgerプロジェクトだ。Cuomo氏は、ブロックチェーンの普及には、オープンな標準に基づくアプローチが必要不可欠だと述べている。ただし、発表の他の項目は補完的な取り組みであり、Hyperledgerプロジェクトが成熟するまでは、それらの取り組みの真価は見えてこない可能性が高いという。
もちろん、ブロックチェーンの将来はまだ見えていない。成長の妨げになる可能性のある課題もいくつかある。Valdes氏によれば、潜在的な問題の1つは、この分野での政府や規制当局の取り組みから受ける影響だという。
しかし、今はまだその段階には至っていない。この技術はまだ発展途上であり、先は長い。
「2016年は概念を実証する年であり、システムが現実に利用され始めるのは先のことだ」とValdes氏は述べている。
3つの要点
- IBMは、ビットコインで利用されているブロックチェーン技術に関する取り組みを強化していくことを発表した。同社はこの技術を企業が利用しやすいものにしようとしている。発表の最も重要なポイントは、IBMがオープンソースプロジェクトのHyperledgerに対してコントリビューションを行ったことだ。
- この発表は、ブロックチェーンの存在感が増していることを示しており、もし成功すれば、IBMはビジネスユーザーに対して、この技術を活用するための水平的な製品を提供できる。
- ブロックチェーン技術はまだ未熟だ。IBMがこの技術に力を入れていくことは、将来の可能性に対してある程度の意味を持つが、ブロックチェーンへの投資を検討しているビジネスリーダーが、近い将来にその見返りを得ることはないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。