「Watson」日本語版、6つのAPIを提供--非構造化データの理解が勝ち組に - (page 2)

大河原克行

2016-02-18 20:27

3倍強の人数がWatsonに関わる

 IBMのWatson担当シニアバイスプレジデントのMike Rhodin氏は、「医療分野のデータは年々2倍ずつ増加するなど、あらゆる業界でデータが増大している。ソーシャルメディアでは数多くの情報が発信されたり、IoTの広がりによって、センサからも数多くの情報が発信されたりしている」と現状を解説した。

IBM Watson担当シニアバイスプレジデント Mike Rhodin氏
IBM Watson担当シニアバイスプレジデント Mike Rhodin氏

 「その多くは非構造データである。情報のサプライチェーンの中でデータをアナリティクスによって情報へと進化させ、さらに情報同士の組み合わせで知識が生まれる。これが企業の競合優位性の力になる。Watsonは、それを実現する技術。日本の出足をみると、米国以上に成長する可能性がある。12カ月前には、ひとつのAPIしかなかったが、今では30以上のAPIが存在し、それが毎月増加し続けている。今後は、業界に特化したソリューションが増加していくことになるだろう」(Rhodin氏)

 現在、Watsonは世界36カ国で展開され、29の業界で採用。8万人の開発者がいるという。英語や日本語など5つの言語で利用されており、世界400社のパートナーを通じて販売されている。

 「今回、6つのAPIを提供することで日本のユーザーがさまざまなメリットを提供できる。多言語であることから日本語で開発して、世界の市場にも導入できる。日本の企業が日本市場に限定した取り組みだけでなく、グローバルマーケットに対しても展開できる」(Rhodin氏)

日本IBM 執行役員 ワトソン事業部長 吉崎敏文氏
日本IBM 執行役員 ワトソン事業部長 吉崎敏文氏

 日本IBM 執行役員 ワトソン事業部長の吉崎敏文氏は「Watsonではナレッジの集合体である『コーパス』が大変重要になる。コーパスには、企業ごとや業界ごとに知見が蓄積され、それが活用できる。まずは金融、医療、メディア、製造、営業支援などの分野で最先端のコグニティブビジネスを創出していくことになる。日本でも各業界のフロントランナーにWatsonを使ってもらいたい」と見通した。

 「Watsonには戦略・企画立案、特定適用領域での訓練、アプリ開発、本番稼働による適用業務領域の拡大という3つのステップを進んでいく」(吉崎氏)

 吉崎氏はまた「日本ではソフトバンクがエコシステムパートナーとなり展開していくが、ソフトバンクが、別のパートナーと組んで新たなビジネスをやるといったことも考えられる。日本IBMもソフトバンクを支援していくことになる」と今後の展開に触れた。

 日本IBMは2015年7月にWatson事業部を設置したが、「事業部の人員のほかにも、Watsonに関連する社員を増やし、日本IBM全体で今の3倍強の人数がWatsonに関わることになる。社内ハッカソンを利用して、100の社内ユースケースを作ることになる」(吉崎氏)

ソフトバンク 専務取締役 法人事業統括 統括担当 榛葉淳氏
ソフトバンク 専務取締役 法人事業統括 統括担当 榛葉淳氏

 ソフトバンク 専務取締役 法人事業統括 統括担当の榛葉淳氏は、「Watsonは文脈から推察できるのが特徴であり、これは経験から学んでいくことで実現する。ソフトバンクでは、Watsonを利用した『ソフトバンクブレーン』を構築中であり、社内の膨大なナレッジやドキュメントを学習し、自然言語でブレーンに問いかけると最適な回答で支援してくれるようになる。ソフトバンクは国内のエコシステムパートナーと連携し、ビジネスを展開していくことになる。続々と参加している。そして、今後もWatsonが進化していくことに期待したい」と語った。

 会見では、カラフル・ボード 代表取締役CEOの渡辺祐樹氏、FiNC 取締役で最高技術責任者(CTO)の南野充則氏、第一三共 執行役員 研究開発本部長の赤羽浩一氏、フォーラムエンジニアリング 取締役副社長の佐藤勉氏、三菱東京UFJ銀行 専務取締役の村林聡氏がWatsonの活用などを説明した。

 三菱東京UFJ銀行は、同日からLINEによる応答サービスの提供を開始した。将来的には、店舗でPepperなどと組み合わせて、これまでの窓口対応では限界があった多言語対応や時間外窓口対応も可能にしていく方針を示した。

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