改めて「プロジェクトを成功させること」の重要性を考える
ここまで、筆者の経験を振り返りながら、典型的なトラブルプロジェクトの原因についてみてきたが、結局大事なポイントは2点、「プロジェクトのゴールを明確にして、それを達成することに集中すること」、そして「プロジェクトの成功に向けて必要なことはすべてやること」だ。おかしいと思うことは指摘し、問題だと思うことはきちんとつぶし、「もやもや」を残さず、着実に前進し続ける。うまくいかなければやり直す勇気も持つ。
最終的に予算と納期を守り、狙ったビジネスゴールを達成できれば、プロジェクトは成功だ。本来、ユーザー企業側もSIベンダー側も「やるからにはプロジェクトを成功させたい」と思っているのだから、その気持ちに素直にのっとってやりきるということだ。
マネジメントがシステムプロジェクトの重要性を理解できない、社内外にスキルが足りない、プロジェクトマネジメントの能力が不足している、事業部門とIT部門とのコミュニケーションがうまくいかないなど、制約となる条件は多々あるにせよ、デジタル化が進む今、システムプロジェクトの遂行なしで事業運営ができないのは厳然たる事実だ。
本連載の第2回、第3回で述べた通り、この現状を打破すべく客観性を持った第三者PMOも活用して、ユーザー企業もSIベンダーもともにプロジェクトの成功にまい進できるチーム作りにぜひ取り組んでいただきたい。
筆者が経験した泥臭く生々しい事例はまだまだたくさんあるが、本稿が読者の皆さまの何らかの気づきになれば幸いだ。今プロジェクト進行中の皆さま、これからスタートする皆さまが、前向きでクリエイティブなプロジェクトを経験できますように、とお祈りすると共に、解決できなさそうなトラブルの予感がしたら、第三者の力を借りるという選択肢を思い出して欲しい。
- 座間利行 株式会社シグマクシス P2(Program&Project)シェルパ ディレクター
- 外資系メーカー、外資系コンサルティングファーム、ITベンダーのコンサルティング部門を経て現職に至る。主に、製造業(電機・電子部品、精密機器、医療機器、自動車)、およびエネルギー業界の企業に対し、業務改革、IT戦略策定、システムの導入、保守まで一貫したサービス提供を得意とする。また、大規模システム導入プロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーの経験を多数有する。顧客企業のビジネスゴール達成まで、変革支援をさせていただく事をポリシーとしている。