ノークリサーチは2月22日、四半期ごとに実施しているIT投資に関する定点観測調査の一環として、中堅・中小企業におけるWindows 10の活用意向に関する調査結果を発表した。
調査は、日本全国・各業種の年商500億円未満の民間企業700社の経営層/管理職/社員を対象とし、2016年1月に実施された。それによると、Windows 10ヘ移行または入れ替え済みの中堅・中小企業は16.1%、移行または入れ替え予定は19.9%だったのに対し、現在利用中のバージョンを維持するとの回答は34.6%だった。
(ノークリサーチ提供)
上のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業全体に対して、「Windows 10への移行方針」を尋ねたもの(部門や事業所によって異なる状況が混在するケースも考えられるため、設問は複数回答可としてある)。
「現在のバージョンを継続利用する」との回答割合は34.6%に達しており、無償アップグレードという特典は必ずしもユーザー企業におけるWindows 10への移行を大きく加速する要因にはなっていない可能性がある。また、30.0%を占める「現時点では判断できない」と考えるユーザ企業層の動きを今後も注視していく必要がある。
(ノークリサーチ提供)
さらに、より詳細な選択肢を抽出した次のグラフをみると、同じ移行方針を表す対となる選択肢における「一部の~」と「全部の~」の回答割合には大きな差が見られないことから、「全社導入は少ないが、一部に導入済みのユーザー企業は多い」といった状態ではないことも確認できる。
移行メリットとしてWindows 10の新機能を挙げる割合は1割未満
年商500億円未満の中堅・中小企業全体に対し、「Windows10へ移行する理由(移行のメリットなど)」を尋ねた結果をみると、「無償アップグレードを利用した方がOS関連コストを削減できる」(35.2%)や「いずれは移行が必須となるので、早いうちに慣れておきたい」(47.0%)といった項目が多いことが分かる。
一方、「認証機能が強化されている(指紋認証や顔認証など)」(6.8%)、「Internet Explorerに代わるブラウザが搭載されている(Microsoft Edge)」(6.8%)、「複数のデスクトップ画面を作成/管理することができる(仮想デスクトップ)」(8.7%)、「新たに対話型のアシスタント機能が備わっている(Cortana)」(2.3%)、「さまざまな端末で共通した画面や操作を実現できる(Continuum)」(4.5%)など、Windows 10で追加された機能に関する回答割合はいずれも1割未満にとどまっている。
業務アプリケーションやPC管理/運用ソリューションの機能改善と併せた移行訴求が有効
(ノークリサーチ提供)
上のグラフは、「Windows 10へ移行する理由(移行するメリットなど)」を尋ねた結果を「IT活用が業績に与える影響」別に集計したデータの一部をプロットしたもの。
これらを整理すると、コスト削減のみを実現しているまたはIT活用で成果を得られていないユーザー企業では「従来のOSと変わらない」という現状維持の観点を重視しているのに対して、売上増加とコスト削減の双方または売上増加を実現しているユーザー企業は新しい業務パッケージ活用やPC管理/運用のコスト削減といった能動的な取り組みを意識していることがわかる。
したがって、ITソリューションを提供する側がWindows 10への移行を訴求する必要が生じた場合には「Windows 10対応に伴って機能の強化/改善が期待される業務アプリケーションやPC管理/運用ソリューションがあれば、それらの活用/導入を支援することでユーザー企業がメリットを享受できるようにする」といった取り組みを進めることが有効と考えられる。