調査

GE、コマツなど--IoT市場で増える非IT事業者によるサービス提供

山田竜司 (編集部)

2016-02-24 08:08

 IDC Japanは2月23日、国内IoT(Internet of Things)市場におけるユースケース(用途)別/産業分野別の予測を発表した。IDCでは、IoTとは「IP接続による通信を、人の介在なしにローカルまたはグローバルに提供できる識別可能なエッジデバイスからなるネットワークのネットワーク」であり、法人や政府、個人などさまざまなユーザーが時間や場所を選ばず利用するネットワーク環境に対して、管理や監視、分析といった多様な付加価値を提供するものと定義している。

 国内IoT市場でのユーザー支出額について、2015年の見込み値は前年比15.2%増の6兆2232億円。2014~2020年の年平均成長率(CAGR)16.9%、2020年には13兆7595億円と予測する。

 産業分野別にみると、製造業、運輸業、公共/公益といった分野が市場の成長をけん引する。こうした分野では従来からさまざまな組み込み系の機器/インフラに対して投資している。そうした機器/インフラの運用効率の合理化や、機器/インフラを通じたエンドユーザー満足度向上などを実現していく上で、IoTを活用することが不可避の流れになりつつあるとした。


コミュニケーションズ マーケットアナリストの鳥巣悠太氏

 具体的には、製造業における製造オペレーションや製造アセット管理、運輸業における輸送貨物管理やフリート管理などの合理化/効率化を、IoTを通じて実現するユースケースが該当する。

 組み立て製造、プロセス製造、運輸/運輸サービス、公共/公益、官公庁の5つの産業分野では、予測期間内のCAGRは16%台後半から17%台で推移し、いずれも2020年までに1兆円以上の市場へ成長すると予測。「主要産業分野」である12業種「組立製造」「プロセス製造」「資源」「運輸/運輸サービス」「小売」「官公庁」「医療」「公共/公益」「通信」「保険」「個人消費者」などの伸び率が平均よりも3%程度高いとした。

 主要産業分野の中でも、さらに「主要ユースケース」としている29種類の伸びが高く、CAGRは18.9%を予定している。


主要ユースケース

 また、個人消費者ではスマート家電、「クロスインダストリ」ではコネクテッドビルディングといった伸び代が大きいユースケースがけん引することで、予測期間内に20%超の成長を期待できるとしている。

 こうした国内IoT市場に対するユーザー支出額の力強い成長の背景には、2020年に開催される東京五輪に向けた景況感上昇の期待に加え、企業の事業部門におけるIT予算拡大とIoTへの期待の高まり、IoTを利用する上での技術障壁/コスト障壁の低下、さらにはIoTをとりまく法規制や支援策の変化が影響しているとした。

 IDC Japan コミュニケーションズ マーケットアナリストの鳥巣悠太氏は、ユーザー企業のIoT施策について、クラウドやモバイル、ソーシャルなどの“第3のプラットフォーム”などを、最新のITを自社の製品やサービスに組み込む「デジタルトランスフォーメーション」によりIoTのサービスプロバイダーに変革できると指摘する。

 「これまでIT活用はバックエンドが中心だった。現在はITをビジネスサイドに持ち込む動きが加速している。例えばGEは航空エンジンの遠隔監視や予知保全、運行最適化などのサービスを提供しているが、センサデータを取得、解析し、ビジネス化したIoT事例といえる」(鳥巣氏)。日本でもコマツやセコム、竹中工務店といった非IT事業者がIoTのサービスプロバイダーになっており、この動きはIT投資の増加に直結すると説明した。

 ITベンダーが実施すべきIoT関連施策については、(1) IT部門ではなく事業部門が窓口になりIoTを推進しているケースが増えているため、事業部門にアプローチするために産業分野別の製品やサービスをとらえる「産業分野の拡大」、(2)分析範囲を広範化、高度化させニーズへの対応をうながす「ユースケースの拡大」 (3)IoT規格の標準化や、少額の投資でAmazon Web Servicesに連携できるIoT基盤「SORACOM」など、エッジデバイスへの広がりを推進する「IoTエッジの拡大」を挙げた。

 さらにIoT投資が多いユースケースや、投資額のCAGRをランキングで示した。


IoT投資が多いユースケース(左)投資額のCAGR ランキング(右)

 鳥巣氏は、IoTのサービスプロバイダーを目指す企業に対して、「IoTクラウド」や「IoTアナリティクス」はあくまでIoTを実現するツールであり、ビジネスモデルの構築やマネタイズ手法こそが重要であると強調。また、これまでバックエンドの保守、運用が中心だったIT部門がIoTビジネスに対応するために必要な施策として、(1)IT部門と事業部門の混成チームを作ること (2)ビジネスが分かるエンジニアを採用すること (3)IT部門の内製化を進めることの3つを挙げた。

 また、鳥巣氏は「IoT関連ではユーザー企業のIT部門と事業部門の予算比は4対3程度」と説明。ITベンダーがIoTビジネスに対応するためには、ユーザー企業の事業部門向けに産業分野別で対応が必要であるとし、IoT関連施策に関しては、IT部門と事業部門の予算に差がなくなってきている現状を示した。

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