OpenStackエコシステムの牽引役を担うのは誰だ

OpenStack商用ディストロを売る各社の狙い--Red Hat、HPE、Mirantisの場合 - (page 2)

羽野三千世 (編集部)

2016-02-24 07:00

OpenStackとKVMを一気通貫でサポート:Red Hat

 Red Hatは、OpenStack Foundationのプラチナメンバー企業として早期からOpenStackの開発に関わってきた。最新版「Liberty」でのコミット数は同社が最多である。Linuxの商用ディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」に代表されるOSSの商用パッケージの販売とサポートを提供する同社は、OSSのコミュニティーにエンジニアを送り込み、そこで開発されたコンポーネントに独自拡張を加えずパッケージする“アップストリームファースト”の開発方針をとる。

 同社のRHEL OpenStack Platform(RHEL OSP)もアップストリームファーストの方針に基づいて開発されたもの。OpenStack Foundation管理下のコミュニティーで機能開発、バグ修正されたコンポーネントのうち、商用サポートが可能なレベルに成熟したものを同社が選定して、3年間の商用サポートと合わせて販売している。

 現行版は、コンピュート(Nova)、ブロックストレージ(Cinder)、イメージ管理(Glance)、オブジェクトストレージ(Swift)、ネットワーキング(Neutron)、ベアメタルプロビジョニング(Ironic)などのコアコンポーネントと、オーケストレーション(Heat)、データプロセッシング(Sahara)、メータリング(Ceilometer)、データベース(Trove)、デプロイ(TripleO)、認証(Keystone)、ダッシュボード(Horizon)などのオプションコンポーネントで構成されている。


:「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」の構成

 RHEL OSPは、同社のRHEL上での稼働に最適化されており、RHELとセットで提供される。「OpenStackで実現する仮想サーバ、仮想ネットワーク、仮想ストレージなどは、LinuxのハイパーバイザであるKVMの機能を使います。RHEL OSPでは、LinuxとOpenStackをセットで検証しており、KVMまでを含めてサポートするのが特徴です」とレッドハット クラウドエバンジェリストの中井悦司氏は説明する。

 OpenStackパッケージの提供を通じて、収益の柱であるRHELの事業を拡大するのが同社の戦略だ。RHELの再販パートナーやSIパートナーのエコシステムを活用して、エンタープライズへOpenStackを訴求していく計画だ。また、クラウドベンダーとのパートナーシップを強化し、OpenStackベースのマネージド型クラウドサービスを提供していくとする。

 OpenStackが稼働するLinuxディストリビューションのシェアは、OpenStackプロジェクト開始当時にRackspaceがUbuntuを採用したことから、今でもUbuntuが50%を占めている。「ただ、今後エンタープライズでのOpenStack利用が拡大していけば、商用サポートで実績のあるRHELのシェアが伸びるはずです」(中井氏)

 RHELビジネスの中に位置付けられるRHEL OSPだが、OpenStack上で稼働するゲストOSとしては、RHELに加えて、SUSE Linux Enterprise Server、Windowsといった他社製OSを利用可能だ。2015年11月に、Red HatとMicrosoftがMicrosoft Azure上でのRHELのネイティブサポートを柱とした戦略的提携を発表したが、この提携の中には「RHEL OSP上で稼働するWindowsのサポート」が含まれていた。現在は、ゲストOSのWindows Server、WindowsクライアントについてMicrosoftによる公式サポートが受けられる。

 同社の今後のOpenStackの開発方向性について、中井氏は、OpenStack Foundationが注力分野の1つに挙げている“ネットワーク機能仮想化(Network Function Virtualization:NFV)”関連技術への投資を継続していくと説明した。「NFVは特にLinuxカーネルと密に連携する分野です。当社にはLinuxカーネルに強いエンジニアが大勢いるので、この分野でも貢献していきたいと考えています」(中井氏)


レッドハット グローバルサービス本部 プラットフォームソリューション統括部 ソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクト 内藤聡氏(左)と中井悦司氏(中央)、同社 プロダクト・ソリューション事業統括本部 クラウド事業部 事業部長 手塚敬一氏(右)

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