OpenStackとCloudStackのどっちを選ぶか
OpenStackは、同じくオープンソースのインフラ基盤技術「CloudStack」と比較されることが多い。もちろん、阿部氏らのチームも正式な提案に至る前にOpenStackと合わせて、CloudStackについても評価した。
当時、VMware基盤を使うという事例はOpenStackでもCloudStackでも珍しかったようだが「2つを比較したとき、英語でのリソースの多さなどから、OpenStackの方が今後市場が活性化すると雰囲気を感じた」と阿部氏。「エンジニアの勘」が大きな後押しとなったようだ。
その勘に間違いはなかったという。「CloudStackで軽く検証したところ実現が厳しく、OpenStackの方が機能を満たしていたし、柔軟に対応できそうだった」と話す。

APCのシステム基盤エンジニアリング事業部 ビジネスソリューション部 部長を務める阿部伸哉氏
APCは大手企業向けシステムインテグレーションを手掛けてきた経験があるものの、OpenStackを使うのは初めてだった。使ってみての感想として阿部氏は、ライフサイクルの早さをあげる。OpenStackは年2回のリリースを実施しており、その中に実にたくさんの機能が盛り込まれる。
「検証を開始したときは“Icehouse(バージョン2014.1)”を使っていたが、モックを作ってテストをしているうちに“Juno(バージョン2014.2)”が登場。新たに追加した機能を考慮すると“Junoの方がいいよね”ということになってJunoで再度評価をし直したと思ったら、バージョン2015.1の“Kilo”がリリースされて……」と阿部氏は苦笑まじりに振り返る。中には潜在的に存在しているバグが、そのまま修正されずにいることもあったようだ。
特定の仕様や機能については、コードを見に行くなど注意深く確認し、それが将来的にどうなっていくのかをチェックする作業があったという。「大変であると同時に、やりがいを感じる部分でもあった」とのこと。なお、フィックスしないものについてはスクリプトを書くことで回避した。
この経験を踏まえ、APCではクラウドですでに事業化しているAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureに加えて、OpenStackを重要な柱とするべく、ナレッジの蓄積を図ることを決めた。