――現在、特に注力していることは。
セキュリティです。1月末に開催したイベントでもセッションのかなりの部分はセキュリティに関してでした。モノをつなぐ基盤としてのSORACOMには、色々なデバイスからデータがクラウドにやってきます。その際、特に大企業の顧客からよく聞かれるのは「本当にインターネットにつないでも大丈夫なのか」という点です。セキュリティを保障するためのサービスとして暗号化などの高負荷処理をクラウドにオフロードする「SORACOM Beam」や仮想プライベートクラウド「Amazon Virtual Private Cloud(VPC)」と接続するための「SORACOM Canal」を発表しています。
SORACOM Canal
これはクラウドコンピューティングが登場してきた時と似ていまして、AWSもインターネットに社内のシステムをつなぐ、持っていくという部分を懸念されていました。VPCをAWSが導入してから大企業でも導入が進んだんじゃないかと思います。さらにオンプレミスのシステムとの接続という意味で専用線接続サービス「SORACOM Direct」を発表しました。
これでクラウドだけではなく既存の資産がある場合、そのシステムと専用線でつなぐことでセキュリティを高めることができます。過去に日立、NEC、NRI、さくらインターネットなどとも接続の実績があります。さらに認証の仕組みとして「SORACOM Endorse」というSIMの認証を応用するさまざまなシステムも発表しました。こちらを使うことでSIMを応用した認証が可能になります。
SORACOM Endorse
例えばショッピングの際にクーポンを出したり、多要素認証として使ってみたり、クルマの鍵として利用するといった活用方法が出てきています。このようなIoTのセキュリティに関する不安を解消することが重要だと考えています。
――2015年9月末、事実上の創業時に2製品、この1月末に4製品をリリースするなど開発のスピードが速い。素早く動くことのできる組織を作るコツは。
素早く仕事を進めることをするためにはそれに見合った人材が必要です。実は人材の獲得に関して言えばあまり苦労はしていません。エバンジェリストとして仕事をしていた時のつながりから優秀なエンジニアに参加してもらっています。管理という意味でも特に困ったことはなくてそれぞれのエンジニアはベンチャーでCTO(最高技術責任者)をやっていたというレベルの人材が多いので、放っておいても仕事を進めてくれます。
「マイクロサービス的に細かくシステムを分けて作り、疎結合する」という方法論に沿って仕事を進めてもらっているという感じです。疎結合という形式により各サービスに適した言語やフレームワークによる開発が可能です。
実際のサービスのリリースも2週間に1回という単位でアジャイルに開発していますが、いわゆるウォーターフォール的な開発とは真逆で、いついつまでにリリースをするということを先に決めてから、限られたリソースでできる範囲のことを優先順位を決めてやろうという発想です。コツといえばその辺でしょうか。