海外コメンタリー

水泡に帰した数十億ドル--米小売大手Targetのカナダ撤退を招いた劣悪なシステム - (page 2)

David Gewirtz CBS Interactive Staff 翻訳校正: 編集部

2016-02-29 06:00

 米ドル用に設定された在庫管理システムは、カナダドルも処理できるようにアップデートする必要がある。システムに通貨のフィールドが実装されていなければ、該当する項目すべてに通貨のフィールドを漏れなく追加する必要がある。さらに、システムは為替レートの変動にも対応する必要がある。一方、在庫管理システムで商品の配置を管理している場合は、商品パッケージのサイズに関する情報も重要となる。そのため、ヤード・ポンド法に加えてメートル法が用いられるのであれば、システムは商品の適切な配置を算出するために、両方の単位系に対応する必要がある。

 これらの問題は、商品の仕入先や価格設定という要素によりさらに複雑化する。取り扱う商品の中には、米国由来でないものも含まれている。たとえば、ある商品が米国には12インチのパッケージに入れて出荷されているとする。しかし同じ商品が、メートル法のカナダには11.5インチ(またはメートル法で整数になるサイズ)のパッケージで出荷されているかもしれない。

 これで分かっていただけただろうか。情報システムの海外対応は、一筋縄ではいかないのだ。Targetのような規模の企業が扱うデータの量は膨大だ。そのため、データを処理する情報システムの開発とカスタマイズにもまた、膨大な労力が必要なのである。

すべては毛皮から始まった

 この物語の起源は、実に1670年にまで遡る。時は340年前の17世紀である。

 当時、英国王チャールズ2世の勅許により、ハドソン湾会社(正式名称The Governor and Company of Adventurers of England Trading into Hudson's Bay)が設立された。ハドソン湾会社は五大湖周辺地域における毛皮取引に対し、事実上の独占的な交易権を認められていた。

 その後、数世紀をかけてハドソン湾会社は次第に姿を変えながら成長していった。蒸気船を運航し、探検家たちのスポンサーとなった。油田やガス田に投資もした。17世紀の交易所は20世紀に入ると百貨店に姿を変え、ハドソン湾会社は多数の小売店を運営するようになった。

 1978年には、ハドソン湾会社の買収を試みた百貨店チェーン、Zellersが、逆にハドソン湾会社に買収された。その後、Zellersはディスカウントストアのチェーンとして成功を収めたが、1990年代にWalmartの攻勢が始まると、次第に市場シェアを失っていった。

 そして2010年になる頃には、Zellers各店舗の資産と借地権の価値が、本業である小売業の収益を上回る状態に陥った。そのため、Zellersの経営陣は非常に高い価値があった借地権と共に、全店舗を売却する方向で動き出した。

 ここでようやく物語はTargetに戻る。なぜなら2011年、Zellersが擁する124店舗の借地権を18億ドルで買収したのが、Gregg Steinhafel氏が最高経営責任者(CEO)として率いていたTargetだったからだ。この買収劇によってTargetは、124店舗の販売網と流通網を支えるインフラストラクチャを、2年に満たない期間の中で構築するという難題に直面することになる。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]