その結果、経営陣が目にする在庫管理レポートは潤沢な在庫を示しているのに、実際の在庫は底を突いているという事態が発生した。かくして、在庫管理システムは崩壊した。事態は極めて深刻だった。
これほどの破滅的な事態が、ビジネスに悪影響を与えないはずがない。カナダでは早くも消費者の心が離れ始めた。売り上げは開店直後から停滞状態に陥った。その一方でデータ入力ミスは起き続けた。たとえば、商品の配送センター到着予定日を示す「in-DC」フィールドに、実際の到着日を入力した従業員もいれば、業者からの出荷日を入力した従業員もいた。
一連のトラブルを一言に集約すると、Target Canadaでは、ありとあらゆる要素が破綻し、何一つとして正しく連携させることができなかった。そんな中、さらなる惨劇がTargetを襲う。当時のCEOだったGregg Steinhafel氏の名前を世間に知らしめた大事件、それが2013年12月に米国のTargetで発生した歴史的な規模の情報漏えいだ。この事件で流出した顧客情報は、実に7千万件を超えた。
ここに至り経営陣はついに我慢の限界に達し、Steinhafel氏を35年勤めたTargetから追放した。後任のCEOには、Sam's ClubのCEO兼社長だったBrian Cornell氏が就任した。この時点で損失が70億ドルに達していたTarget Canadaは、破産保護を申請した。133カ所の全店舗が閉店し、1万7000人の従業員が職を失った。
この事例からわれわれが学ぶべきことは何か。あまりにも多くのミスが連鎖しており、それらを引き起こした根本原因を特定するのは困難だが、不可能ではない。つまるところ、Targetはカナダ進出に際して、まったく新しい独立した情報システムを構築すべきではなかった。その代わりに、既存の情報システムを注意深く拡張して国際化させ、全機能の準備を整えた段階で海外進出を図るべきだった。
また、カナダ全域に散在する多数の店舗を一斉に開店させるのではなく、店舗数は段階的に増やすべきだった。全店舗を一斉に開店させた場合、発覚した問題を修正する余裕がなくなり、1つの問題が連鎖反応を引き起こし、Target Canadaのような破綻劇に陥る可能性が高い。
この物語の最大の教訓は、企業においてITは文字通り生死の鍵を握っているということだ。ITは、場当たり的な対応では正しく運用できない。今日の企業はITによって駆動されている。この事実を忘れた瞬間に夢は灰となり、数十億ドルが水泡に帰す。
補足:Target Australiaに関する質問が寄せられたので、回答しておこう。Target Australiaは、別の会社が所有する完全なる別会社である。Targetの米国本社からブランド名の使用許諾を得てTargetを名乗ってはいるが、両社の間で企業ガバナンスやインフラストラクチャなどは一切共有されていない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。