Dellとの統合を控えたEMCがストレージとコンバージドシステムで攻勢をかけている。両分野とも高い成長が見込まれるが、激戦区になりつつもある。果たしてEMCは成長市場の“追い風”に乗れるか。
ストレージとコンバージドプラットフォーム製品に注力
「2016年はオールフラッシュストレージおよびコンバージドプラットフォーム製品とも本格的に利用が広がる節目の年になる」
会見に臨むEMCジャパンの大塚俊彦社長
EMCジャパンの大塚俊彦社長は、同社が先ごろ開いた2016年の事業戦略についての記者説明会でこう強調した。EMCにとっても2016年は、2015年10月に発表されたDellとの統合を控えた節目の年となる。
大塚氏は会見で事業戦略の基本方針として、「ITトランスフォーメーションとデジタルトランスフォーメーションの両面で、顧客企業のビジネス革新を強力に支援していきたい」と語った。同じトランスフォーメーションでも「IT」と「デジタル」でどう違うのか。
同氏によると、ITトランスフォーメーションは「従来の基幹業務システムをはじめとした“第2のプラットフォーム”のコスト効率を向上させる」ことが目的だ。一方、デジタルトランスフォーメーションは「クラウドやモバイル、ビッグデータ分析などの新たな技術を活用した“第3のプラットフォーム”によって企業競争力を向上させる」ことを目的としており、この2つのトランスフォーメーションを“両輪”として動かすことで、コスト効率にも企業競争力にも貢献していこうというのがEMCの考え方だ。
図1に示したのが、その具体的な製品戦略である。第2および第3のプラットフォームそれぞれに、「ストレージプラットフォーム」「コンバージドプラットフォーム」「ソリューション」といった3つのカテゴリにおいて戦略商品を展開している。
(図1)第2および第3のプラットフォームにラインアップされたEMCの製品
成長市場の追い風に乗って存在価値の大きさを示せるか
注目されるのは、大塚氏の冒頭の発言にあるように、EMCが戦略商品としているオールフラッシュストレージおよびコンバージドプラットフォーム製品とも、IT市場において今後高い成長が見込まれていることだ。それだけに両分野とも激戦区になりつつあるが、いずれの市場もリードしていければ、まさしく“追い風”に乗ることができる。今年秋までに実現する予定のDellとの統合にも弾みがつくだろう。
ただ、Dellとの統合を控えて気になるのは、コンバージドプラットフォーム製品はDellも戦略事業の1つとして推進していることから、ユーザー企業からすると統合後の製品戦略にどのような影響があるのか、現段階では不透明に映っているように見える点だ。会見の質疑応答で大塚氏にその点を聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「Dellとの統合に関しては米国本社の発表内容がすべてで、それ以上にお話しできることはないが、われわれとしては引き続き、ミッションクリティカル向け、スケールアウト向け、部門や店舗向けといった3タイプのコンバージドプラットフォーム製品を展開していく姿勢に変わりはない」
図2がその製品ラインアップである。大塚氏はかねてDellとEMCの製品群は「補完関係がある」と語っており、顧客層としてもEMCが大手企業、Dellは中小企業に強いことから、製品を統合するよりもむしろラインアップを広げる方向に行くのかもしれない。その前にEMCがオールフラッシュストレージとともにコンバージドプラットフォーム製品でも販売に勢いをつけられれば、Dellとの統合で製品戦略に一層厚みを持たせることができるだろう。
(図2)EMCのコンバージドプラットフォーム製品
果たして、成長市場の追い風に勢いよく乗れるかどうか。それはDellとの統合を控えたEMCの存在価値の大きさを示すものにもなりそうだ。