クラウドの値打ち

このままだと日本は「クラウド後進国」--デジタル化とクラウド推進は両輪 - (page 5)

戸賀慶 岡本武士

2016-03-25 07:00

デジタルビジネス化時代のIT部門

 昨今のビジネス環境の変化に対して、企業ITはどのように立ち向かうべきか。日本企業の場合、トップダウン型でデジタルビジネスへの変革を促すことは難しそうだ。

 本来は経営層も含めて変革していくことが望ましいが、それにはまだまだ時間がかかりそうだ。このような現状において現実解として考えられるのは「ハイブリッド型」である。現行IT部門がデジタル化時代のIT部門に少しずつ変化し、そこからボトムアップ型で持ち上げたものを、トップダウンで企業ITをデジタルビジネスへの変革に対応させていくのが結果的には早道だと考える。

 既にデジタル化時代のIT部門に変化しているハイパフォーマンスな企業に学び、やり方を融合していくことが大切である。

 ハイパフォーマンス企業は「システムの安定こそがミッション」「既存システムの維持/運用が中心」という従来のIT活用モデルではなく、「ITを活用した新しい経営・事業モデルやサービスを構築することが中心」「ビジネスに貢献しうる創造的な手法を試すことが中心」というデジタル時代における新しいIT活用を実践してきている。

 「ビジネスに向けてITを最大限活用し、その価値をいち早く届ける」――。これがデジタルビジネス時代のIT部門に求められる役割であり、そのためにはクラウドサービスなどの社外のIT資産を必要に応じて柔軟に活用・結合することが必要である。

 そして、この「柔軟に活用」という考えをIT資産だけにとどまらず、業務のプロセスにも広げ、サービスとして利用しようというのが、「As-a-service」という新たな考え方である。

 今後、IT部門の役割は大きく変わることが求められる。Gartnerによると従来型のIT人員配置は、アプリケーション開発・サポートに39%、インフラ/運用に39%となり、デジタルスタートアップ企業におけるデジタル化人員の配置は、ソフトウェア開発に17%、インフラ/運用に15%となっている 。おおよそ、半分以上の人員が自分の職種を変える必要が出て来るのである。

 もちろん、急にこのような人員配置になるわけではないので、過度期の状態も出て来るだろう。こういった業務とITが一体となった「As-a-Service」のデリバリモデルを活用し、デジタル技術によりビジネス環境変化を先取りすることを中心に据え、企業ITをデジタルビジネスへ変革させていく旗手となることがIT部門の役割ではないだろうか。

戸賀 慶(とが けい)
アクセンチュア オペレーションズ本部 インフラストラクチャーサービスグループ シニア・マネジャー
サーバ、ネットワーク、ストレージなどのデータセンターテクノロジおよびクラウドを専門とし、現職では企業におけるインフラ全般の最適化に向けたコンサルティング、トランスフォーメーションを担当。 アクセンチュア ジャパンにおけるクラウドイニシアティブのリードとして、クライアント企業にクラウドの真の価値を届けるために日々、奔走。
岡本 武士(おかもと たけし)
アクセンチュア オペレーションズ本部 インフラストラクチャーサービスグループ マネジャー
専門分野はクラウドコンピューティングにおけるアドバイザリー、ソリューション策定、及び、クラウドインフラ導入。 2015年より現職。日本最大級のパブリッククラウドサービス構築プロジェクトにて管理責任者従事の経験があり、インフラ領域に関する技術に精通している。

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