大木豊成「Apple法人ユースの取説」

店舗のレジスターがなくなり、代わりに置かれたApple製品とは

大木豊成 2016年03月07日 07時00分

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 「オムニチャネル」という言葉を聞いたことがあるだろうか。オムニチャネルとは、店舗やイベント会場、インターネットショップやモバイルなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で顧客と接点を持とうとする考え方やその戦略のことを指す。

 いわゆるマルチチャネルとは一線を画している。マルチチャネルは、ただチャネルを増やすだけの多角展開であることに対し、オムニチャネルは全てのチャネルを連携させて顧客にアプローチするという違いがあるのだ。実店舗に行く顧客がネットショップで買い物をすることもあるし、スマートフォンで情報を収集することもある。スマートフォンでチェックした商品を、実店鋪に試着をしに行くこともある。

 このオムニチャネル戦略を実行するうえで、従来型のレジスターを排除し、店頭とネットショップで商品、在庫、売上げなどのデータを一元管理できるクラウドサービスを導入する企業が出てきた。今回は、プラグラムが提供する「スマレジ」というクラウドサービスを導入したナノ・ユニバースの事例を紹介する。

iPadをPOSにして免税販売のボトルネックを解消

 セレクトショップを全国で68店舗展開するナノ・ユニバースでは、オムニチャネル戦略を展開する上で、全店舗で従来型のレジスターを排除し、スマレジを導入した。

 スマレジは、iPadにPOS機能をもたせるクラウドサービスだ。基本のレジ機能やクレジットカード決済機能はもちろん、複数店舗やネットショップにまたがる在庫や売上げを一元管理し、それらのデータをリアルタイムで集計する機能を提供する。また、免税店販売時に必要な免税帳票を一発で印刷出来る機能も持っている。


店舗に置かれたスマレジ用iPad

 ナノ・ユニバースでは、外国人観光客のニーズに対応すべく、もともと数店舗で免税販売を行なっていたが、iPadとスマレジを導入によって、免税販売店舗を48店舗まで拡大することができた。

 免税販売でボトルネックになっていたのは、免税品販売時の申請書だ。従来は、3枚綴りの免税書類に手書きで書き起こしていたのだが、それに結構な時間がかかっており、さらに商品や金額記載の書き漏れ、ミスなどが発生していた。

 これが、スマレジでは免税販売から申請書出力までの情報をシームレスに連携してくれるため、わざわざ商品・金額を書き起こす必要がなくなった。ミスが減り、外国人の顧客を待たせる時間も圧倒的に減った。スマレジを導入することで、時間の有効化のみならず、顧客満足度も上がってきたのだ。


スマレジ画面

iPadのPOSを店舗で活用するポイント

 従来型レジスターをiPadに入れ替える際に、いくつか留意しておくべきポイントがある。

 従来型のレジスターにはしっかりとした保守サポートが付いており、故障しても電話一本で解決することが多い(その分高いので、大抵はリースを組むなど導入が大掛かりになってしまうのが難点だが)。一方で、低コストなiPadをPOSにした場合は、故障が起きた際にiPadの問題なのか、スマレジの問題なのか、あるいはネットワークの問題なのかが切り分けにくいことがある。店舗のスタッフはITのプロではないのでそのあたりが分かりづらい。

 筆者が所属するイシンでもiPadを使ったクラウド型POSサービスをサポートしている。サポート契約がある顧客からイシンに障害の問合せがあった場合は、まず障害原因の一次切り分けをしている。それによって原因を特定し、速やかに次のステップに進むためだ。

 また、導入後の運用も課題だ。外部の業者に丸投げでいいのか、あるいはどこまで社内でまかない、どこから先は外部に委託するのか、を明確にしておく必要がある。iPad本体が故障してしまったらアップルしか対応できないが、かといって店舗のスタッフがアップルストアに向かうことは難しいだろうし、サポートに連絡する時間を作り出すことが難しいかもしれない。だとすると、そういった運用を外部に委託してしまう方法もある。


店舗に置かれたスマレジ用iPadイメージ

 さらに、繁華街の店舗では混線にも注意が必要だ。筆者が過去に問い合わせを受けた事例では、新宿の繁華街にある店舗で、iPadのWi-Fiのマークはしっかり確認出来るにも関わらず、インターネットに接続できない、というものがあった。そこにイシンの社員が向かってみると、同所で確認できるだけで30以上のSSIDが確認された。特に2.4GHzという周波数帯を使っている場合、Bluetoothや電子レンジ、ワイヤレスインターホンなどとも電波干渉を起こしてしまう可能性があるのだ。

 新宿や渋谷といった繁華街にあるテナントビルでは、自由にWi-Fiを飛ばしていることが多い。そして、「IEEE802.11b/g/n」の機種では、一般的に1~13チャンネルのいずれかを使用しているはずだが、実は、完全に独立して使えるチャンネルは3つまで、ということは意外と知られていない。つまり、3つ以上のSSIDが検出されたら、すでに電波干渉を起こしている可能性が高いのだ。そういうときにどうするのか、ということも、自社内で運用するかどうか、というところにかかってくると言える。

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