本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、国立情報学研究所の喜連川優 所長と、トレンドマイクロの岡本勝之 セキュリティエバンジェリストの発言を紹介する。
「産学連携のコグニティブテクノロジ研究を社会イノベーションにつなげたい」 (国立情報学研究所 喜連川優 所長)

国立情報学研究所の喜連川優 所長
国立情報学研究所(NII)が先ごろ、AI(人工知能)技術を活用した「コグニティブ(認知)テクノロジ」の研究を推進する「コグニティブ・イノベーションセンター」を2月1日付けで新設したと発表した。喜連川氏の冒頭の発言は、その発表会見で、同センターの活動に向けた意気込みを語ったものである。
喜連川氏によると、同センターは日本IBMと研究契約を結んで同社の支援を得るとともに、幅広い業界の日本企業が参画し、コグニティブテクノロジの社会応用促進に向けた意識変革と、最先端技術と産業の新たな結びつきの発見という2つのイノベーションを起こすことを目的としている。
センター長には第10代人工知能学会会長を務めた早稲田大学基幹理工学研究科情報理工専攻教授およびNII客員教授の石塚満氏を招いた。研究内容としては、AI技術にとどまらず、多様なITの要素を幅広く活用し、とりわけビッグデータから学習して自然なインタラクションの中で人間の認知や判断を支援する面に主眼を置くとしている。
同センターではNIIが持つコンピタンスに加え、この分野で世界に2000人を超える研究者や開発者を擁するIBMの知見、およびIBMから提供されるコグニティブシステム「IBM Watson」やクラウド基盤「IBM Bluemix」を活用し、さらには参画企業各社の知見も融合しながら、新たな価値創出に挑む構えだ。
産学連携による同センターの新設について喜連川氏は、「長年にわたってコンピュータの歴史をつくって来られたIBMとのパートナーシップはたいへん有意義なことだ。さらに参画企業とは定期的に研究会を開いて各社の経営層にも積極的に参加していただき、まさしく産学連携ならではのプロジェクトを推進していきたい」と語った。
参画企業には、みずほフィナンシャルグループ、三菱東京UFL銀行、三井住友銀行、第一生命保険、日本航空、パナソニック、日産自動車、小松製作所、オリンパス、キリンビール、帝人、キッコーマン、三越伊勢丹ホールディングスなど21社が名を連ねている。