盛り上がる「シビックテック」--オープンデータの国際イベントが開催

山田竜司 (編集部)

2016-03-08 07:00

 一般社団法人Open Knowledge Foundation Japan(OKFJ)は、各地域をとりまとめる形で、行政機関が保有するデータを著作権や特許などの制限なしで利用できるオープンデータを推進するイベント「International Open DataDay2016」を3月5日に開催した。以前は個人のエンジニアが中心だった取り組みが、富士通、日立製作所、NECといった大手企業も参画に乗り出すなど、官民が連携してITによる社会課題の解決を目指す動きが強まってきている。

 2004年に立ち上がった、オープンデータ利用を推進する英国の非営利団体「Open Knowledge」がグローバルネットワークにより開催を呼び掛け、日本では67地域、世界でも260地域以上が参加した。オープン化されたデータをいかに活用するかアイデアのユニークさを競う「アイデアソン」や、アイデアを実際にオープンデータを使ってアプリなどを開発する「ハッカソン」などが各地でなどを各地で開催した。

 日本で4回目の開催となるInternational Open Data Dayは、テクノロジにより住民自治を改善する「シビックテック」活動の一環であり、人口減少による地域の経済的な疲弊や行政の財政難に対し、ITでの地方自治の効率化や問題解決を見据えている。また、東日本大震災以降、地域の活性化や行政サービスの改善を支援する一般社団法人「Code for Japan」の活動など、個人としてプログラミングやIT技術により地域課題に貢献するエンジニアが増えている。


OKFJ代表の庄司昌彦氏 右はオープンデータの広報用キャラクター。公共データがオープンされることを、缶(=官)が開いたキャラクターで表現しているという

 内閣官房もこうした動きを推進しており、2015年6月に発表した、IT総合戦略本部でのIT戦略の基本方針である「世界最先端IT国家創造宣言」改訂版でも、「課題解決型のオープンデータの推進(新規)」という記載があり、官民の連携が加速している。

 国の動きとともに、富士通はオープンデータを利用し、自治体比較をする評価ツール「EvaCva」を2014年から提供、日立製作所は、公共機関でのオープンデータ化をサポートしているほか、NECはオープンデータの活用支援サービスをてがける。日本マイクロソフトでも横浜市や札幌市ともオープンデータ利用や実証実験で提携するなど、オープンデータをビジネスに利用するためのツールや取り組みが数多く展開されている。

 日本での開催をとりまとめているOKFJは今回、各地域の取り組みをUSTREAMやソーシャルメディアで紹介した。こうした情報発信の中、IT総合戦略本部もオープンデータを推進する意味を解説。日本各地で自治体職員がイベント運営に参加したり、議論に加わるなど多くの連携が見られ、千葉市では千葉市長の熊谷俊人氏も参加した。

 OKFJ代表の庄司昌彦氏によると、Code for Japanなどの活動などもあり、シビックテックはすでに各地で盛り上がりを見せており、函館と室蘭や会津若松と南相馬市など地域同士でアイデアや発表内容を共有し合うなど連携が活発化しているという。

 また、ハッカソンやアイデアソンではITリテラシーの高いエンジニアが参加するケースが多かったが、学生や子連れでの主婦など、地域課題のさまざまなステークホルダーがイベントに顔を出すようになってきたと説明。

 さらに、国や自治体が公開したオープンデータを利用するだけでなく、オープンデータを自らの手で作るケースが多くなってきたと指摘した。地域の文化や歴史といった情報を住民がWikipediaに記録する活動である「Wikipediatown」や、フリーの地理情報データを作成するプロジェクト「オープンストリートマップ」などにデータを書き込み、オープンデータを「作る」取り組みが見られたとした。

 一方、地方行政で現場に携わる職員にとってはオープンデータを整備する作業が重荷になる場合もある。内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室は「データのオープン化と利用促進は両輪で考えねばならない」と説明。データを公開、運用する担当者がきちんと成果を感じられるよう、オープンデータ活用事例をより多く作っていくことが重要とした。今後、各自治体にもオープンデータの整備や活用推進を内閣官房自ら呼びかけていくとしている。

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