日本マイクロソフトは3月1日、「インテリジェントクラウド」事業セグメントに分類する分類する「Microsoft Azure」と「SQL Server 2016」の新機能に関するプレス向け勉強会を開催した。アジャイル開発で新機能が実装されるAzureサービス群のアップデート状況を紹介する目的で、数カ月に1回の頻度で実施されている。
この記事では、前編に続く後編として、Operations Management Suite、Microsoft Cloud App Security、Azure Rights Management Premium、Microsoft R Server、SQL Server Reporting ServicesのHTML5対応、Azure SQL Database Index Advisor、Azure Active Directory Integration、Dynamic Data Masking、Row Level Security、Always Encrypted、Azure AD Identity Protection、Azure AD: B2C、Azure IoT Hubなどを取り上げる。
日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの伊賀絵理子氏(左)と北川剛氏(右)
Operations Management Suite
「Operations Management Suite(OMS)」は、分析や自動化といったあらゆる作業を簡素化するサービスだ。WindowsやHyper-V、AzureといったMicrosoft製品だけではなく、Amazon Web Services(AWS)やOpenStackなどもOMSダッシュボードから管理状況を把握し、包括的に管理できる。
2月末にアップデートされ、以下の3つの機能がOMSダッシュボードから参照できるようになった。
- ネットワークデータやAzureのセキュリティ、認証やアクセス制御イベントに関連するセキュリティ情報を提示する「Security Domains dashboards」
- 重要度に応じた優先順を示して視認性を高める「Notable issues」
- IPアドレスの識別やセキュリティ脅威をインテリジェントに示す「Threat intelligence」
各種情報を集約して管理者の負担を軽減するOMSダッシュボード
Microsoft Cloud App Security
Microsoftはデータ保護強化の一環として、2015年9月にクラウドアクセスセキュリティブローカーのAdallomを買収し、同社の技術を用いたサービスを「Microsoft Cloud App Security」の名称で4月から提供開始する。
Cloud App Securityは、セキュリティイシューを提示してネットワークの可視化と、俗にシャドーITと呼ばれる無許可の私用デバイスを含める統制を可能にするもの。BoxやSalesforce、ServiceNow、Aria、Office 365といったSaaSに対応する。
日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの北川剛氏によれば、2016年第3四半期を目標に、Cloud App SecurityをOffice 365へ統合する予定だという。一見するとEnterprise Mobility Suite(EMS)と競合するように見えるが、今後はOffice 365に統合されたCloud App Security、単独のEMSというように共存していく。
最終的にOffice 365との統合を目指すMicrosoft Cloud App Security
Azure Rights Management Premium
「Azure Rights Management Premium」は、これまでEMSに含まれていた機能を独立したサービスとして提供を開始したものだ。メールやデータファイルなどを暗号化し、さらに利用権限を付与することで安全に共有できるようにする。Azure Active Directory(AD)で暗号化の解除や認証を行い、ファイルやメールを“いつ、どこで、誰が、開いた、拒否された、転送した”といった情報をたどることができる。送付し終えた後でもボタン1つで権限を剥奪して、メールやファイルを閲覧できなくすることもできるため、情報漏洩した場合の回収作業も容易になるとする。
相手に送ったファイルやメールを最後まで制御するAzure Rights Management Premium
Microsoft R Server
「Microsoft R Server」は、Microsoftが2015年4月に買収したR言語関連ソフトベンダーRevolution Analyticsが開発した「Revolution R Enterprise」の名称を変更したものだ。Windows版、Red Hat Linux版、SUSE Linux版、Hadoop on Red Hat版、Teradata DB版があり、Windows版は次期SQL Serverに統合され、「SQL Server 2016 R Services」の機能名で提供される予定だ。
また、オープンソースとしてRevolution Analyticsが提供していた「Revolution R Open」も「Microsoft R Open」として継承するという。プラットフォームも名称変更前と変わらず、WindowsやMac、各Linuxディストリビューションをサポートする。
Microsoftが買収したRevolution Analyticsの製品群もMS化した
SQL Server 2016 R Servicesでは、R言語でのデータベース処理により、機械学習モデル展開の高速化やデータ解析といった多様な用途が期待できる。さらにR言語で記述したスクリプトを並列分散実行できるのも特徴の1つ。メモリに収まらない大規模データ処理を可能にするため、データ開発者だけではなくデータサイエンティストの作業効率も向上する。
Rスクリプトを実行可能にするSQL Server 2016 R Services