より賢く活用するためのOSS最新動向

OSSで商売をする4つのビジネスモデル - (page 2)

吉田行男

2016-03-09 07:00

3.サービスモデル

 「サービスモデル」は、OSSを活用して構築したサービスを提供するモデルです。代表的な例は、Google、Amazon Web Services(AWS)、Facebookなど。このモデルでは、自社のサービスに最適なOSSを選定し、システムを構築するということになります。この場合、ソフトウェアの構成を自ら決められるということが最大の特徴です。どのOSSを活用するかは、自社で実績のあるものや検証したパターンのみを活用することができるため、ビジネスモデルとしては、最適なモデルだと思います。

 それ以外にもOSSをそのまま活用するのではなく、その周辺に自社がサービスを提供するための各種ソフトウェアを追加してサービスを提供するという場合もあります。例えばAWSは、MySQLのストレージエンジンである「InnoDB」を活用し、それに自社で開発したMySQL互換機能を活用し、自社のAmazon RDSのサービス「Aurora」を提供しています。

 日本でも同様にOSSを活用してサービスを提供しているサイボウズのような例もあります。最近では、NECや富士通などの大手のベンダーもOpenStackやCloud Foundryを活用して各種OSSを組み合わせたり、周辺のソフトウェアを開発したりしてクラウドサービスを提供しています。

4.その他

 最後に、前述の3つに当てはまらない「その他」のモデルもあります。これは、ハードウェア販売などの目的達成のためにOSSを活用するモデルです。

 代表的な例は、いわゆるハードウェアベンダーである日立、富士通、IBM、NEC、Hewlett-Packard Enterprise(HPE)などになります。「サービスモデル」に似ていますが、提供するものがサービスではないので少し違います。これら企業はハードウェアを販売するために動作検証したり、各種ソフトウェアの認証を取ったりといった作業が必要になるということで、最終的にはハードウェアを提供することになります。

 とはいえ、昨今のクラウドが一般的になってきている状況においては、ハードウェアベンダーもサーバだけが売れれば良いという状況ではなくなってきているので、今後はこのようなパターンは減少していくのではないかと思います。

 ということで、大雑把なビジネスモデルの説明は終わります。ではビジネスの現場で一番活用されているビジネスモデルはどれでしょうか?

ビジネスモデルのハイブリッド化が進んでいる

 以前は、“4つの中のどれかが1番”と回答できたのですが、最近は少し形が違ってきており、上記4つのビジネスモデルをいくつか組み合わせた「ハイブリッド」化が進んでいます。これについて、分散基盤であるHadoopを事業化しているCloudera社を例に説明したいと思います。


 Hadoopはもともと、Google社員が書いた論文がきっかけになって開発が始まりました。現在は、ASF(Apache Software Foundation)のOSSプロジェクトとして存在しています。このHadoopプロジェクトに貢献している会社は、このCloudera社とHowtonWorks社の2社が有名です。

 Cloudera社がどのようなビジネスをしているのかというと、まず、パッケージ化して「Cloudera Distributed Hadoop(CDH)」という製品を販売しています。もちろん、エンドユーザーはサポートなしで使用することも可能ですが、保守サポートが必要な場合はCloudera社が保守サービスを提供しています。これは、上記のビジネスモデルではディストリビューションモデルになります。しかし、Hadoopの導入や構築、Haddop上でのソフトウェア開発は非常に難しく、誰でもが簡単にはできません。そこで、その簡単ではない部分をプロフェッショナルサービスとして提供しています。

 これと同じようなビジネスを推進しているのが、OpenStackのディストリビューションを提供しているMirantis社です。Mirantis社は、OpenStackのディストリビューションを製品化しているほか、導入のコンサルから、教育・構築支援までをフルサポートする企業です。このように、ディストリビューションモデルとシステムインテグレーションモデルの両方を併せ持った“ハイブリッド・ビジネスモデル”で商売をしているのです。

 次回は、これらビジネスモデルとOSSを活用してビジネスを展開する企業の戦略についてご紹介したいと思います。

※本文中記載の会社名、商品名、ロゴは各社の商標、または登録商標です。

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