この戦略は既に実行に移され、成果を上げている。Microsoftは1年余り前に、同社のHadoop製品である「Azure HDInsight」のLinux版を提供すると発表した(Mary Jo Foley記者の記事を参照)。この発表を機に、ビッグデータ分野におけるMicrosoftの名声は大きく高まったのだ。
同じくMicrosoft Data Platform MVPを受賞したMicrosoft Regional DirectorのSimon Sabin氏は、もう1つの側面を指摘している。SQL ServerのLinux版により、コンテナ化されたアプリの分野におけるMicrosoftの躍進が期待できる点だ。Windowsベースのコンテナという選択肢もあるが、Linuxの世界ではDockerコミュニティが一大勢力を誇っている。
より重要なのはおそらく、HDInsightのLinux版が投入されたことで、ビッグデータ関連の独立系ソフトウェアベンダーとのさまざまな提携が可能になる点だ。こういった提携は、「Windows Server」版しかなかった時には考えられなかった、あるいは非常に難しいものだった。これにはDatameerとMicrosoftの提携も含まれており、既に両社はビジネス(すなわち収益)の機会を手にしている。文字通りWin-Winというわけだ。
企業、開発者
Windows版のSQL Serverの方がより豊富な機能を持ち続けるとしても、Linux版の登場によってMicrosoftへの信頼は高まるはずだ。有望なIT系新興企業や、大企業を含む、多くの企業はWindows上への製品展開を積極的に行いつつも、Windowsにしか対応していない製品は戦略性に欠けると見なすようになっている。Linux版のSQL Serverはこの種の問題を解決するだろう。
また、開発者の抱える問題も解決される。多くの開発者はLinuxをベースにしたスタック上で開発したいと考えるようになってきている。Microsoftは「SQL Server Express Edition」という無償製品や、「SQL Server Developer Edition」という製品(米国での定価は59.95ドル。実売価格はもう少し安い)を提供するようになったにもかかわらず、MySQLやPostgreSQLといったLinux互換のオープンソースデータベースに比べると、ここ数年でデータベース製品としてのマインドシェアと市場シェアを低下させている。ここでもLinux版のSQL Serverによって流れが変わるはずだ。