Microsoftは米国時間3月10日、Oracle Databaseから「SQL Server 2016」へ移行するユーザー向けに無償ライセンスを提供する計画を明らかにした 。国内でも展開するという。
同社はつい3日前に、Linux版のSQL Serverを発表したばかりだが、こちらには直接的なOracle対抗の色は感じられず、むしろOSSの中での存在感を示した格好だった。一方、今回の無償ライセンスは、SQL Server 2016の初速を勢い付けるべく、直球のOracle対抗策を打ち出してきたものだ。はたして、この対抗策はどの程度有効なのだろうか。
発表によれば、今回のOracle Databaseユーザーに対する移行キャンペーンは、“移行時のライセンスを無料にする”というもの。なおかつ6月末までの期間限定なので、実際にOracleからの移行を決断するユーザーはそれほど多くないだろう(※2016/03/14 追記:国内では6月末以降も同キャンペーンを継続する)。
Oracle Database Enterprise Edition(EE)をきちんと使っているようなユーザーの場合には、いくらSQL Serverのライセンスが無料になるとしても、その特典だけで移行に踏み切るとは考えにくい。移行時には、アプリケーションの改変が必要なケースもあるし、Oracle特有、EE特有の機能などを活用している場合には移行作業は簡単ではないからだ。そもそも、EE使っているような顧客はサポートサービスも契約しているはずなので、Oracle Databaseのバージョンアップの際に別途ライセンス費用が発生するわけでもない。
そうなると、今回の無償ライセンスキャンペーンのターゲットとなるのは、Oracle DatabaseのStandard Edition(SE)、SE1を使っているようなユーザーになりそうだ。ちょうど昨年、Oracleがライセンスを変更し、SE/SE1が「SE2」へ移行された。これがSE1からはコストアップ、SEからは制限が増えることで、ユーザーから不満の声が上がっている。そういったユーザーの中には、今回のタイミングに合うならばSQL Serverへの移行も大きな選択肢になりそうだ。
Oracleとしては、SE/SE1ユーザーのうち、よりOracle Databaseを使いこなしたい層にOracle Database Applianceに移行してもらい安価にEEの世界にきてほしいし、より安価で使いたい層はSE2ではなくクラウドへきてほしいというのが本音だろう。ところが、このメッセージは、特に国内ではあまりユーザーのもとに届いていないように感じる。そういう意味では、マイクロソフトにとって、日本市場は今かなり攻め時な雰囲気が漂っている。
本質的には、新しいSQL Server 2016の売りはセキュリティ機能の強化、Stretch Database、Rとの統合、BI機能をワンパッケージで提供するといったあたりの点になる。このような価値を含めて、ユーザーにTCO面のメリットをどこまで感じてもらえるかで、Oracleからの本格的な移行を勝ち取れることになるだろう。