本稿では、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
3月7日週の日経平均は、1週間で76円下がって1万6938円となった。2月29日週に1万7000円を回復したことから、週前半は戻り待ちの売りものが増え、9日には1万6642円まで下がった。ただし、世界的にリスク資産を買い戻す流れが続いていることから、週後半は反発に転じ、11日には1万6938円と1万7000円手前に戻した。
11日のCME日経平均先物は、1万7035円まで戻しており、3月14日週の日経平均は、1万7000円台を回復して始まると考えられる。
3月14日週は、15日と16日にドル円為替レートを動かす可能性のあるイベントが控えており、注意を要する。3月14日週の日経平均は、1万6500~1万7500円の範囲で乱高下する可能性がある。
世界的にリスク資産を買い戻す流れが継続
足元、原油先物を始め鉄鋼石・銅・プラチナ・金などコモディティ価格が一斉に反発する中、資源国の通貨や株が買われる流れが続いている。リスク資産がなんでも売られる流れから、リスク資産が少しずつ買い戻される流れが出つつある。日本株も、その流れの中で戻り歩調になっている。
資源価格の上昇は、世界的な金融市場の混乱を収束させるのに大きな効果がある。2015年8月以降、資源価格の急落が、世界景気を悪化させ、さらに産油国による世界の金融資産の売りを誘発してきたことがわかっているからだ。
原油の反発によって、世界的にリスク資産が買い戻されるのは自然な流れだ。日本株にも2015年8~9月に加え、今年の1~3月に、産油国から売りが出ていた模様だ。原油価格の下げが一服すれば、産油国の売りも一巡すると予想される。
ただし、まだ波乱要因は残っている。一番心配なのは為替だ。米国FRBが今年、全く利上げができないと円高が進む可能性がある。円高が進む局面で、日経平均が急落する可能性は注意が必要だ。
日経平均週足:2014年4月~2016年3月(11日まで)
今週のイベント、日米金融政策に注目
円高が進むと、日経平均が急反落するリスクも残っている。今週は、為替を動かす可能性のあるイベントが2つ控えている。
(1)日銀金融政策決定会合
14~15日に開かれる日銀の金融政策決定会合が注目だ。15日の昼ごろに結果発表がある。政策変更はないと予想されるが、サプライズで何か動きがあると、市場に影響する。
また、結果発表後の記者会見で、日銀黒田総裁が何を語るかも重要だ。マイナス金利のマイナス幅をさらに拡大する意思があるのか、あるいは、これ以上マイナス幅を拡大することには消極的なのか、どちらを意図した言い方か、読み取る必要がある。
マイナス金利にさまざまな弊害があることがわかってきている。黒田総裁がそれを認めるとは考えられない。今後、マイナス幅を拡大することに積極的か否か、そこから読み取るしかないだろう。
黒田総裁が、これ以上の緩和(マイナス金利のマイナス幅拡大)に消極的ととられると、円高が進みやすくなる。ただし、マイナス金利で売られた金融株は、追加緩和への不安がなくなれば、いっせいに買い戻しが入ることになるだろう。
引き続き、マイナス金利のマイナス幅をさらに拡大することに積極的ととられると、円高の進みにくくなるが、金融株の上値を抑えることになる。
(2)米FOMC(金融政策決定会合)
もう1つの注目イベントは、米FOMCだ。16日に結果発表がある。政策変更(利上げ)はないと思われるが、結果発表後の記者会見で、米FRB議長のJanet Yellen氏が何を語るかが重要だ。
6月以降の利上げに強い意欲を示せば、ドル高(円安)が進みやすくなる。利上げは当分できないと示唆すれば、ドル安(円高)が進みやすくなる。
3月14日週は、イベント後に為替が動き、それにつれて日経平均が乱高下する可能性も頭に入れておく必要があると思われる。
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