連載第1回では、スパースモデリングの顕著な成果として、医用画像とりわけMRIでの利用を紹介した。そして前回は、人事評価のためのデータ解析を例え話ではあるが考えたところである。今回登場したのは、画像処理、音声処理、はたまた文章の解析技術である。
これら広い分野、科学技術が関わる全ての分野におけるデータ解析の場面で利用することができるのがスパース性を利用した方法である。ポイントは、目の前にある大量のデータを「理解」するというモチベーションである。ビッグデータがあれば、それで救われるわけではない。
それを料理するための包丁が必要で、しかもそれはとびっきり切れ味の鋭いものである。外の料理屋でおいしいものを食べるにも、家庭料理でうまいものを食べるにしても、包丁を扱う人が必要だ。そしてどんな料理にしてほしいかを願う人も一緒になって、食材となるデータをうまく扱ってほしい。
- 大関 真之(おおぜき まさゆき) 京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教
- 博士(理学)。専門分野は物理学、特に統計力学と量子力学、そして機械学習。2010年より現職。独自の視点で機械学習のユニークな利用法や量子アニーリング形式を始めとする新規計算技術の研究に従事。分かりやすい講演と語り口に定評があり、科学技術を独特の表現で世に伝える。