今年は日本とベトナムの関係を見直す年?
イベントの最後に、フロアから出た意見が非常に印象的でしたので紹介します。
「 オフショア開発の大きな目的は、コスト削減。ベトナムが、例えば日本の3分の1といった人件費であればコストメリットはあるが、2分の1を超えてくるとベトナムでオフショア開発を行うメリットはなくなる。日本では、この10年ほど、残念ながらエンジニアの月額給料はほとんど上昇していない。上流工程を担当できる日本人SEであっても70万円といったコストだろう。一方、中国で同じ業務を行おうとした場合、単価が65万円以上となることもある。こうなると中国との付き合い方もおのずと変化する。ベトナムでもエンジニアの単価上昇が著しい。ベトナムのソフトウェア業界は、果たしてこのままで良いのだろうか」
これと同様の人件費の高騰に関わる問題提起はこれまでも何度もなされており、この連載でも紹介してきましたが、その回答の1つが、FPT社をはじめとする日本への進出なのかもしれません。
また、これからは、より積極的に「ベトナムが日本に上流工程をオフショアする」、または「より上流の開発にも着手する」という発想で事業に取り組む会社も出てくるでしょう。日本とベトナムのソフトウェア業界の交流が深まって10年の節目を迎えた今年は、新しい2国間交流が生まれる年になるかもしれません。
- 古川 浩規
- インフォクラスター
- 内閣府及び文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:国立大学法人 電気通信大学 非常勤講師、日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、財団法人 日本・ベトナム文化交流協会 理事